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 同じ民族同士を隔てる軍事境界線を、2人が手を結んでまたいだのは1年前だった。

 板門店での会談でうたいあげた南北朝鮮の共同宣言は、新たな共存の時代を思わせた。その後も両首脳は2回会談した。

 しかし、完全な非核化と朝鮮半島の和平という宣言の目標は今なお、実現の道が見えない。米国と北朝鮮との交渉の滞りが厚い壁になっている。

 韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は米朝間の「仲裁者」を自認している。この1年間でみれば、米朝首脳会談の実現など確かな成果をあげてきたが、いまは難しい局面に立たされている。

 2回目の米朝会談が不調に終わり、双方が韓国の介入に距離を置き始めた。互いの不満が韓国にも向けられ、文氏は板挟みになっている。

 文氏自身、南北関係を最重視しており、停滞が続くのは苦しい思いだろう。だが今は辛抱の時と心得てほしい。

 打開を焦って単独行動に走れば、せっかく醸成してきた各国の対話機運はしぼむ恐れがある。朝鮮半島政策では、米国・韓国・日本が常に緊密に連携する態勢を崩してはならない。

 韓国への風当たりはとくに平壌で強い。金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長は「さしでがましい仲裁者ではなく、民族の利益を守る当事者たれ」と批判した。

 トランプ米大統領も、文氏がめざす南北協力事業の再開に難色を示している。先月の会談では、北朝鮮の核放棄と制裁の完全解除の一括合意を提案した。

 日米首脳も先日、この方針を続ける必要性を確認した。

 文氏はいまは対北支援を急ぐのではなく、北朝鮮への説得を粘り強く続けてもらいたい。

 核やミサイル開発から手を引けば国際社会からの支援の道が開かれる――。選択肢はこれ以外ないと諭すことが、仲裁者としての責務である。

 韓国の足元は揺らいでいる。文政権の下で経済成長率が低迷している。

 庶民救済をねらった最低賃金の引き上げは結果として中小零細業者を苦しめ、失業率の上昇を招いた。当初8割近くあった支持率は4割台に落ちた。

 北朝鮮の軍事挑発を止めさせたことへの評価はなおも高いだけに、南北関係の進展をめざしたいところだろう。

 しかし、北朝鮮はそんな事情に乗じて韓国を米国から離反させようと、もくろみかねない。韓国が米国と疎遠になれば、逆に北朝鮮はもはや韓国を相手にしなくなるだろう。

 厳しい状況は続きそうだが、だからこそ文政権は国際社会と歩調を合わせ、北朝鮮の変化を促す努力を強めてほしい。

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