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 小康状態にあった米国と中国の貿易紛争に、これでは油を注ぐようなものだ。

 米国のトランプ大統領がツイッターで突然、中国からの輸入品への関税を10日から引き上げると表明した。2千億ドル(約22兆円)分について、10%から25%にするという。

 米中間の通商協議の進展が「遅すぎる」ことを理由に挙げている。今回は対象としない残りの3250億ドル(約36兆円)分についても、「近く25%になるだろう」と予告した。

 通商協議で中国側の譲歩を引き出すための、トランプ流の脅しにも見える。しかし、いったん協議を有利に進められたとしても、長期的に安定した米中関係を築くことにはならないだろう。米国は大国としての責任を自覚しなければならない。

 米中の首脳は昨年12月、今年3月1日を期限に交渉に入ることを約束した。

 中国における知的財産権の保護などについて両国が合意できれば、昨年以来続く制裁と報復関税の連鎖に歯止めがかかり、世界経済の不安要因も払拭(ふっしょく)できると期待された。

 当初の期限は延長され、両国の話し合いは次の期限を明確に区切らずに、続いてきた。具体的な内容は明らかになっていないが、直近の閣僚級の協議について、米国側が「生産的だった」と評価するなど、合意に向けて最終段階に入ったとの見方もあった。

 ところが、米メディアによれば、中国側が受け入れていたはずの約束を撤回したという。それに米側が反発し、協議中は猶予していた追加の制裁関税の実施を持ち出したようだ。一方で米高官は、中国側が態度を変えれば協議を続ける用意がある、と述べたという。

 いまこそ、2大大国の良識が試されている。協議の場を閉ざすことなく、解を見いだす努力を粘り強く続けてほしい。

 中国からの輸入品すべてに米国が高い関税をかければ、中国はもちろん、米国を含む世界経済に、大きな影響を及ぼしかねない。

 中国が外国企業に技術移転を強制していることや国有企業への補助金などは、日本や欧州も問題視してきた。米国は中国に対し、国際的なルールにのっとって行動するよう、冷静に説得してほしい。

 そのためにも、世界貿易機関(WTO)ルール違反の疑いのある制裁関税を自らがふりかざすことは、厳に慎むべきだ。

 国有企業改革などは、中国経済が次の段階に進むためにも必要とされる。中国は改革の姿勢を世界に示す機会ととらえ、対応に踏みだしてほしい。

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