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 中東の核拡散を防ぐ「たが」が壊れようとしている。核問題の沈静化を求めてきたはずの米国が逆に危機をあおっている。ゆゆしい事態である。

 焦点は、地域大国イランの核開発問題だ。開発を制限する代わりに、米欧などが経済制裁を解くことを決めた4年前の合意が、存続の瀬戸際にある。

 イランのロハニ大統領がおととい、合意の一部に従わないと宣言した。米国がちょうど1年前に一方的に合意から撤退したことへの対抗措置だ。

 イランは、中断された原油の輸出や貿易を続けられるよう求めている。60日以内に実現しなければ、ウラン濃縮を始めるとも警告した。

 米国は空母や爆撃機部隊を周辺に展開している。イランとの対立悪化を見越し、力の誇示を強めている。中東地域の緊張は高まるばかりだ。

 はっきりさせておきたい。今のこの危機を生んだのは、他ならぬ米国自身である。

 核合意は、オバマ政権下の米国はじめ英独仏中ロとイランが築いた歴史的な成果だ。イランはその後、国際機関による核査察にも応じ、順守してきた。

 ところがトランプ氏は、オバマ政権の業績を否定し、イランを嫌う米国内の保守派の歓心を買うねらいも込めて、合意をほごにしたのである。イランが反発するのは無理もない。

 制裁対象は金融などにも広がり、イラン経済は悪化の一途にある。対外強硬派の発言力が強まっており、対話路線のロハニ師は窮地に立たされている。

 ロハニ師は「合意から離脱はしない」とも表明した。賢明な判断だが、一方で核開発をちらつかせる態度は慎むべきだ。忍耐強く合意を守る限り、米側に理がないことは明白だ。その立場を放棄すべきではない。

 もしもイランが核兵器につながるような開発に走れば、局面は一気に緊迫する。敵対するイスラエルの動きも読めない。世界の原油市場のさらなる動揺は避けられまい。

 国際社会に座視する余裕はない。英独仏と欧州連合は、合意を存続させる努力を強めてほしい。イラン経済を支える機関を設けたが、民間企業はリスクを恐れて関与できずにいる。

 身勝手なトランプ外交が招く国際環境の悪化をどう防ぐか。その難題を抱えるのは、中国やロシアも同様だろう。欧州との協力を惜しむべきではない。

 中東にエネルギーを頼る日本も、イランとの長い友好関係を生かし、緊張緩和に努めたい。安倍首相は常々、トランプ氏との親密さを強調するが、ならば今月の首脳会談で健全な中東政策を直言したらどうか。

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