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 非効率、無駄、意見が出ない、長すぎる――とかく評判の悪くなりがちなカイシャの会議。一方で、話しやすい雰囲気のなか、実のある議論を交わし、サクサク意思決定している会議もあります。そこにはどんな秘訣(ひけつ)があるのでしょうか? 明日にもできる小さな工夫から、会社全体の大きな改革まで、みなさんと一緒に考えます。

 ■30分単位、多くても6人

 グーグル日本法人では会議の時間は30分が1単位です。全員がしっかり話せるよう、参加人数は通常、多くても6人程度。社員の予定はオンラインカレンダーで共有されており、空いた時間に設定すればそれぞれに招待が届きます。

 資料や議事録はすべてオンラインで共有。会議前に、目的、アジェンダ(議題)をアップし、全員が理解した状態で会議を始めます。議事録には会議をしながら全員で書き込み、会議終了と同時に完了。次回までの目標や役割分担を決めます。

 会議室外からテレビ電話で参加している人も疎外感を感じずに会議に参加できると言います。

 一方で、上司との1対1のミーティングでは時間や議題を決めず、ざっくばらんにプライベートやキャリアについて雑談するなどの工夫も。

 同社ブランドマーケティングマネジャーの山本裕介さんは「疎外感や罪悪感を感じず、『どんなことを発言しても大丈夫』という心理的安全性を常に担保することが大切です」。

 ■全社会議で一体感

 会議の効率化をはかりつつ、昔ながらの「全社会議」をするベンチャー企業もあります。

 「今週も盛り上がっていきましょー!」。毎週火曜日の夕方、会計ソフトを展開するfreee(フリー)のホールには、200人を超える社員が集まります。「ウィークリーオールハンズ」と呼ばれる全社会議。基本的に社員は出席必須で、地方支社ともテレビ会議で中継します。

 佐々木大輔CEO(最高経営責任者)が会社の方向性について話したり、成果をあげた社員を紹介するコーナーがあったり。「升席」と名付けられた最前列の席には、毎週違う4人の社員が座り、質問など「にぎやかし」の役割を担います。

 フリーは2012年に設立、現在は従業員約500人に成長しました。もともと全社会議は経営戦略などを社員に伝える場でしたが、社員の急増にともない、社員の交流に重点が置かれるようになりました。

 社内コミュニケーションを担当する関口聡介さんは「普段の会議は目的をきちんと定め、効率的にやるのが原則。でも、オールハンズでは同じ目的を目指している、という一体感を抱いてほしい」と話します。(栗林史子)

 ■楽しいと思われるように工夫 作家・江上剛さん

 「会社という病」(講談社+α新書、2015年)に、私は「この世の会議の9割は無駄である」と書きました。日本型経営では本社も現場も会議が多すぎるし、長すぎる。上司も部下も言い訳ばかりだから、まとまりを欠いていつまでも結論が出ない。上司と部下の双方に蔓延(まんえん)する「無責任体質」の“たまもの”と言うべきでしょう。

 何のために会議をするのか。それは、組織で働くさまざまな職種の人たちが同じ方向を向き、そのポジションでやるべきことを意識してもらうため。「参加するだけ」では意味がなくて、いかに言葉を届け、考えてもらうかが大事なんです。

 だから私は銀行の支店長だったとき、「会議は月に1回、1時間だけ」と決めました。お菓子や飲み物を用意して、会議に来ることは楽しいと思ってもらうように工夫した。課長たちには、あなたの言葉がみんなに通じるように内容や話術を磨きなさい、と。会議は楽しいと思わせれば勝ち。そういう会社は、放っておいても業績が上がるんです。社員を歯車にせず、参加意識を高めれば、上司も部下も仕事が楽しくなるから。

 一方的に指示ばかり飛んでみんなうつむいているような会議では、数字だけを見るようになり、現場を見なくなる。社長が「チャレンジしろ」と言い、それを忖度(そんたく)した現場が会計不正に走った東芝がその典型例でしょう。

 臨済宗の名僧、沢庵和尚は江戸時代、上山藩(いまの山形県)の藩主からまつりごとの要諦(ようてい)を聞かれ、「上中下」の三字をもって説きました。「上中下三字説(じょうちゅうげさんじのせつ)」として知られていますが、上司と部下は一体であり、その両者をつなぐ「口」を貫く一本線が言葉。言葉を通わせれば意思は通う、と。昔も今も、大事なのはコミュニケーションなんです。

 会議やツールがハイテク化されるのもいいし、立ったまま会議したり会議室をなくしたりという外形的な工夫も有効でしょう。結局は、互いが顔と顔を合わせて意思を通わせることが、会議を円滑にする基本。会議は無駄であり、必要なんです。(聞き手・松村愛)

 ■「いつでも相談」体制で、ほぼゼロに

 会議がほぼ無くなったという会社があります。東京のIT企業フォンアプリ。2008年に創業して急成長し、企業向けスマホ電話帳システムは国内シェア1位で、社員も急増しました。100人を超えた頃を境に、危機が訪れたといいます。「社員に仕事の押し付け合いや派閥意識が出てきました。全体の士気が下がり、新しい取り組みもなかなか進まなくなったのです」と副社長の中川紘司さんは振り返ります。

 調べると、各部署内でもコミュニケーション不足があり、その一因が全部署でやっていた週1回の定例会議でした。ちょっとしたトラブルや疑問の解決を、社員が次の会議まで持ち越すという状況が日常化していたそうです。

 そこで、定例会議を廃止。会議は必要な時だけに絞り、代わりに部署内のチャットツールを導入し、誰でも常時ネットを通じて同僚に相談できるようにしました。

 さらに、社の移転にあわせ、社員の座席を固定しないフリーアドレス制を導入。通常とは逆に社員数より多い席を用意すると、話したい相手の隣にすぐ座れて、打ち合わせが迅速になったそうです。

 「会議を待たず、自ら相談する。分かったのは、社員の自発性を引き出すことの大事さでした」と中川さん。「気付けば社内の会議はほとんど無くなっていました。必要な会議もありますが、スピード感を持って適切な決定ができる仕組みと態勢こそ大切だと思います」(長野剛)

 ■働き方改革へ、学校も工夫

 職員会議に、生徒指導や学年ごとの会議。学校の先生も日々たくさんの会議に出ています。今年、中央教育審議会が出した学校での働き方改革に関する答申でも、勤務時間に配慮した時間設定や回数削減の必要性が指摘されました。各地で様々な取り組みが進んでいます。

 鳥取県立鳥取工業高校は、資料を会議中に読み上げることをやめ、あらかじめパソコンの共有フォルダーに入れて会議前に目を通せるようにし、「本題にすぐ入れるようになった」(松川明義教頭)そうです。

 横浜市立南戸塚中学校は、進路指導など部門の会議で立ってやる「スタンドミーティング」を3年前に導入。1回、10~15分程度で、例えば1回目は部門長がメンバーに検討課題を割り振り、2回目は各自が案を持ち寄る。3回目で意見を出し合い結論に向けて議論を練る――。会議の回数自体は増えたものの議論の内容は濃くなり、「放課後に生徒に向き合う時間もより確保できるようになった」と石黒裕校長はいいます。

 私立聖学院中学校・高校(東京都)は数年前、夜遅くまでかかっていた毎週の職員会議を、原則として隔週にしました。テーマは厳選し、一つにつき議論は20分程度に。学年単位の会議では、校内のネットワークに議題を書き込んでおき、会議は各自それらを見ながら進めます。新たな提案をする人には資料を作って事前に提示してもらいます。「誰かが演説し始めて時間切れ、ということもなくなり、前向きな議論も増えました」と生田直子教諭はいいます。(丸山ひかり)

 ■上の人ほどルール守らぬ

 朝日新聞デジタルのアンケートに寄せられた声の一部を紹介します。

     ◇

 ●長時間の割にフワッ

 会議室の予約から15分以内に利用者が来ない場合は、会議室を開放。Skype会議なども多いですが、長時間会議をするわりに、決定事項や次回までの課題などがフワッとしていることが多いです。(IT、ベンチャー 東京都・20代女性)

 ●小休止を入れて集中

 2時間を超えてしまう会議は50~60分おきに小休止を入れます。小休止を入れる前に今までのまとめを行い、小休止後にこれからの議論のポイントを整理。集中した議論を行えるように工夫をしています。(サービス業 神奈川県・30代男性)

 ●目的ないのに集まる?

 アンケートに寄せられた声を読み、アジェンダの無い会議ってあるのか、とびっくり。会議の前に目的を設定する、が秘訣(ひけつ)? 目的もないのに集まってどうするんですか?(医療、福祉 海外・40代女性)

 ●管理職ほどルール守らぬ

 会議の質を上げるためにルールをいくつか決めたが、上の人間ほど守らない。しばらくしてルールもうやむやになり立ち消えに。管理職は自由な時間があるので良いが、現場はたまったものではない。(製造業 青森県・40代男性)

 ●時間短縮はしたけれど

 事前に要職者と打ち合わせをすることによって、会議の時間短縮にはなりましたが、会議自体の意義が薄くなってしまった。(官公庁、諸団体 長崎県・40代女性)

 ●決定する人なしではしない

 意思決定ができる人間には必ず会議に出てもらいます。さもなくば会議自体は見送りとしています。(IT、ベンチャー 東京都・30代男性)

 ●意味のない職員会議

 学校関係です。ほんとに意味のない職員会議は時間の無駄。みなさん会議中もパソコンで仕事してるので連絡しても、案件当日には口をそろえて「聞いてない」。(その他 大阪府・40代男性)

 ◇「それってウチの会社のこと?」。そう思う人が少なくないであろう話を聞くことが多い今シリーズの取材でした。

 「問題があるパターン」を研究者らから聞くたびに、私もドキッ。「会議の決定を誰が実行に移すのかが不明確」「仕事の情報は上司や部下以外の社員から集める」――。どこかで経験したような気も。

 京都大の末松千尋教授は「問題のある会社ではみんな、『我が社が最悪』と思っている」と教えてくれました。確かに、自社を嘆いているだけでは仕方がありません。私も頑張ります。(長野剛)

 ◇私が「会議」に関心を持ったのはIT企業に転職した夫の一言がきっかけでした。「30分単位。議論のための会議はしない。メンバー構成も常に見直す」などなど。終わりの時間を気にせず、心理的安全性とはほど遠いタイプの会議が多めな我が新聞社とは大違いでした。

 会議って、カイシャそのもの。新しい発想や気づきがある会議は参加者を元気にします。マイクロソフトを取材中、気づいたら相手近くまで歩み寄り相づちを打っていた私に、担当者が「それ、立ち上がりたくなる椅子なんです」。乗せられちゃう会議、私もやってみたい。(松村愛)

 ◇来週19日は「ペットとどう出会う?:1」を掲載します。

 ◇アンケート「ペットとどう出会う?」をhttp://t.asahi.com/forum別ウインドウで開きますで実施中です。ご意見はasahi_forum@asahi.comメールするでも募集しています。

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