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 人間の活動のせいで、かつてないほどの勢いで地球の自然が損なわれている――。生物多様性と生態系の現状を科学的に評価する国際組織(IPBES)が、先日、新たな報告書を公表して警告を発した。

 7年前に設立され、132カ国が参加する。加盟国の政策づくりに資する提言をめざし、今回のリポートも、日本を含む各国の専門家145人が約3年をかけてまとめ上げた。

 そこに書かれたさまざまなデータからは、地球の悲鳴が聞こえてくる。

 たとえば、世界中に存在すると推定される800万種の動植物のうち、少なくとも100万種が数十年以内に絶滅する恐れがあるという。そのペースは、過去1千万年の平均の10~100倍にあたる。

 背景にあるのは、人類による土地や海、河川の野放図な利用だ。この半世紀で、農林水産業の発展や都市の拡大により、陸地の75%と海洋の66%で環境が悪化した。温暖化や、海に流れ込んだプラスチックごみなども生き物の脅威となっている。

 このままでは、2010年に名古屋で開かれた生物多様性条約締約国会議(COP10)で決まった「愛知目標」や、15年に国連で採択された「持続可能な開発目標」(SDGs)を達成することはできない。報告書はそう見ている。

 それは、人が生きていく基盤である農林水産業などが、早晩たちゆかなくなることを意味する。一例として報告書は、花粉を運ぶ昆虫が消えてしまうことで農業生産が毎年5770億ドル(約63兆5千億円)も減るリスクがあると指摘する。

 IPBESのロバート・ワトソン前議長は「経済や暮らし、食糧安全保障、健康などの基盤を私たち自身が侵している」と訴える。人間の生活は自然の恵みなしでは成り立たない。そんな当たり前の事実に、改めて目を向ける必要がある。

 残された時間は決して多くない。各国は、あらゆる分野で変革に取りかかるべきだ。食料や燃料、木材など多くの資源を輸入に頼る日本も、地球規模の環境破壊に無関心でいることは許されない。

 エネルギーや食料、水などの大量生産・大量消費を見直す。温室効果ガスを減らして地球温暖化の進行を抑える。脱プラスチックを進める……。どれも容易ではないが、成し遂げなければならない課題だ。

 来年、中国で開催されるCOP15では「ポスト愛知目標」が議論される。世界を持続可能な姿にするために、どんな戦略を描くのか。国際社会の覚悟が問われている。

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