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 ■ビルの林に「笑顔」咲く遊歩道

 川面のきらめき、船の水しぶきのざわめき、涼風のときめき。東京・銀座から徒歩30分ほどの距離に、隅田川の水辺を歩ける「隅田川テラス」がある。新緑の季節、河口付近、中央区佃(つくだ)かいわいをぶらりとそぞろ歩きはいかが。

 隅田川テラスは都のスーパー堤防等整備事業の一環で、1987年度から、緩やかな傾斜の堤防の川側に幅広のテラスを整備。隅田川のにぎわいを戻すことを目指し、順次整備が進められている。

 下流にかかる佃大橋と中央大橋の間の隅田川テラスの花壇にビオラやパンジーが色とりどりの「笑顔」を見せた。ボランティアの「花守さん」が花の植え替えや水やりなどをする。地元住民たちでつくる「鉄砲洲ガーデンの会」代表の柴田好子さん(71)は「水上からもきれいに見えるように工夫しています」。対岸の桜並木の新緑の先に高層マンションが林立している。

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 「佃大橋の途中で、東京タワーと東京スカイツリーが見える」と聞き、約476メートルの橋を歩いて渡った。途中、ビルの合間に東京タワー、隅田川の先に東京スカイツリーが見える。橋は今は数分で渡れてしまう。だが、橋が完成した1964年まで、人々は両岸を結ぶ渡船「佃の渡し」で行き来していた。江戸期から約300年続いた佃の渡しは隅田川の最後の渡しだった。

 橋を渡り、佃島に入ると、数軒並ぶ佃煮屋からの甘辛いにおいが漂う。超高層マンション群のふもとに、路地や堀、銭湯、駄菓子屋など下町風情あふれる町並みが広がる。朱色の佃小橋からは、新旧のコントラストを望める。

 佃島は江戸時代初期、摂津国の佃村と大和田村(現在の大阪市西淀川区)から移住した漁師たちが埋め立てて築いた。漁師たちが将軍に献上するために行った白魚漁は江戸の風物詩だったという。江戸後期に刊行された「江戸名所図会」には江戸湾の様子も描かれ、大小様々な船が停泊し、活気がうかがえる。

 川沿いに進み、「佃まちかど展示館」へ。展示されている住吉神社の例大祭で担がれる千貫神輿(せんがんみこし)は迫力満点。大祭は3年に1度、4日間。新しい住民も増えるが、祭りを仕切る佃住吉講の渡辺陸夫さん(79)は「人と人とのつながりで祭りが成り立っている」と言う。

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 区立佃公園を通り、区立石川島公園方面に向かった。ここはかつて「石川島人足寄場(にんそくよせば)」があった。池波正太郎の小説「鬼平犯科帳」のモデルの火付盗賊改方長官、長谷川平蔵が無宿者などを収容し職業指導をした場所だ。

 その後は工業の町に変わる。ペリー来航の1853年、幕府に命じられた水戸藩が石川島に造船所を創設。洋式帆走軍艦「旭日丸」などが建造された。造船所はIHI(旧石川島播磨重工業)の母体となる。同社はこの地で造船を始め、クレーンや橋梁(きょうりょう)など様々な産業分野の製品を生産したが、1979年に工場を閉鎖した。

 「近代的造船業の発祥地であり、重工業の工場が東京のど真ん中にあったことに驚きませんか」。造船所跡地に立つ「石川島資料館」を案内してくれたIHI広報・IR部の竹内祐子さん。資料館では満員の佃の渡しでの通勤など、昭和30年代の工場の1日をジオラマで展示。当時、約2千人が働いていたという。

 高層マンション群を背に、石川島公園先端の広場に出ると、水辺が広がる。2020年の東京五輪に向け工事中の永代橋や、東京スカイツリーが見渡せる。暮らしに溶け込んできた隅田川。悠久の流れに江戸の昔も今も人々を引きつける不思議な魅力がある。(宇津宮尚子)

 ◇東京メトロ有楽町線月島駅から佃まちかど展示館(無料)まで徒歩約5分。佃公園内の隅田川テラスを通り、石川島資料館(無料、水・土曜日の午前10時~正午、午後1~5時)や石川島公園へはさらに徒歩5~10分。佃大橋西側の隅田川テラスへは東京メトロ有楽町線新富町駅から徒歩約5分。

 ■(おすすめ)伝統の味、守り続ける佃煮屋

 隅田川に面する佃煮屋の天安(てんやす)本店(03・3531・3457)は1837(天保8)年創業。昆布、あみ、しらすなど、ずらりと並ぶ佃煮の甘辛いにおいが食欲をそそる。

 佃島の佃煮は江戸時代、漁師たちが江戸湾で取れた小魚や、将軍に献上して余った魚を塩で煮詰めて、保存食としていたのが始まりとされる。その後、千葉からしょうゆが伝わり、しょうゆで煮た佃煮が売り出され、広まったといわれる。

 天安の味の秘密は創業時から伝わる秘伝のたれ。しょうゆなどを継ぎ足しながら、伝統の味を守る。材料を煮込むときは季節や気温などに応じて、時間を調整。職人がつきっきりで、直火でじっくりと味を染み込ませる。「『やっぱり天安さんの味だね』と3代続けて来られる常連客もいます」と従業員の西川春枝さん。最近はショウガの佃煮なども人気という。

 ■プレゼント

 「漆芸中島」の江戸八角箸の縞黒檀(しまこくたん)(長さ24センチ)と紫檀(同22・5センチ)をペアで1人にプレゼントします。箸置きはつきません。

 江戸時代半ばから続く老舗漆器店。11代目の中島泰英さんが一膳ずつ手作業で作り上げます。材木は流通量が少なく、希少な縞黒檀と紫檀を使用。箸の削り直しなどメンテナンスも受け付けています。

 件名「見つける・隅田川」で、名前、住所、電話番号と記事の感想をメール(yukan-toukou@asahi.comメールする)でお送り下さい。19日(日)必着。当選者にのみ連絡します。

 <訂正して、おわびします>

 ▼13日付「見つける」面の「隅田川テラス」の記事で、「旭日丸」を日本初の洋式帆走軍艦としたのは誤りでした。別の船が先に造られていました。

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