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 「核なき世界」をめざす機運が正念場を迎えている。長年続いてきた国際条約による軍縮が逆風下にあるからだ。

 なかでも主柱とされてきたのは、NPTと呼ばれる核不拡散条約である。発効50年を迎える来年に向けて今月、国連本部で準備会合が開かれた。

 ところが来年の論議へのたたき台となる文案もまとまらずに終わった。核兵器を持つ国と、持たない国との意見の隔たりが埋まらないことが背景にある。

 世界の核の9割超を持つ米国とロシアの両首脳は、核軍拡の野心すら隠さない。両国の外相はおととい会談したが、軍縮の作業部会づくりに触れただけで大した進展はなかった。

 このままでは核問題は悪化するばかりだ。5年ごとに開かれる来年のNPT再検討会議が前回に続いて決裂すれば、不拡散体制は深刻な危機に陥る。

 核の脅威が蔓延(まんえん)する世界においては、どんな大国でも自国第一の安全保障など確立できない現実を直視するべきである。

 保有国と非保有国の乖離(かいり)は、一昨年にできた核兵器禁止条約で新たな段階に入った。今月の準備会合では、広い支持を記そうとした動きに米国などが「分断をもたらす」と反発した。

 そんな保有国側の主張は説得力に欠ける。そもそもNPTが定める核軍縮の義務を守ろうとしていないからだ。

 冷戦末期に交わした中距離核戦力の全廃条約について、米ロは離脱を決めた。両国間には戦略核を減らす別の条約があるが、これも約2年後の期限切れ以降が決まっていない。

 この停滞を戒める声もある。07年に核廃絶を提唱した米国の「4賢人」のうち、シュルツ元国務長官、ペリー元国防長官ら3人が先月、改めて警鐘を鳴らす論文を発表した。破局を防ぐために、米国は対ロ交渉に注力すべきだと訴えている。

 米ロ両政権は当面、戦略核の条約延長を確実にする交渉を急がねばならない。

 冷戦期からの軍縮ルールを生かしつつ、時代に合わせて効果を高める努力も必要だ。最大の変化はトランプ政権も指摘するとおり、中国の台頭である。

 いまのところ中国は一切の縛りを拒んでいる。こうした態度を改めさせ、長期的には保有国を包含する軍縮の枠組み作りをめざさねばならない。そのためにも米ロがまず2国間の合意を固めなければ道は開けない。

 日本政府は保有国と非保有国の橋渡しを自認してきたが、核禁条約に背を向ける限り、役割を果たしているとは言えない。来年のNPT会議で不拡散体制が堅持できるよう、米国を含む各国の調整に努めるべきだ。

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