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 憲法の根幹である平和主義を理解せず、武力による紛争の解決を禁じる国際法にも反する。一線を越えた議員の暴言にどう対処するのか、国権の最高機関の見識が問われている。

 北方領土を戦争で取り戻すことを肯定するかのような発言をして、日本維新の会を除名された丸山穂高衆院議員への対応である。

 維新を含む野党6党派は議員辞職勧告決議案を衆院に提出した。与党は自発的な出処進退を促す譴責(けんせき)決議案を出した。与野党とも採決は全会一致が望ましいとの立場で、取り扱いを協議中だ。折り合わなければ、両案ともに廃案の可能性がある。

 過去に可決された辞職勧告決議は、収賄などで逮捕や起訴された場合に限られている。丸山氏は発言内容を理由とする提出を「言論の自由が危ぶまれる」と批判し、可決されても辞職しないと明言している。

 しかし、ビザなし交流で訪れた国後島で、元島民の団長に向けられた発言は、戦争で故郷を奪われた者の心情を踏みにじり、領土問題の解決に向け、日ロ両国の信頼関係の構築をめざす交流事業の精神にも反する。

 内容のみならず、酒に酔っていたという状況からしても、言論の自由をうんぬんできる次元のものではない。国会議員として資質を欠くことは明らかで、自ら職を辞すのが筋である。

 辞職勧告、譴責の両決議案は、辞職を求めるか否かという結論こそ違え、丸山氏の発言が日本の平和主義に反し、国会の権威と品位を失墜させたという認識は共有している。ここはお互いに歩み寄り、衆院としての意思を明確に表明すべきだ。

 与党は譴責にとどめた理由について「議員の身分にかかわる問題には慎重であるべきだ」という。確かに、選挙で選ばれた国会議員の地位は重く、多数派が数の力で辞職勧告を乱用するようなことはあってはならない。しかし、丸山氏への辞職勧告が、身内に跳ね返ってくるのを避けたいという思惑があるとしたら、本末転倒である。

 政権内では最近も、同僚の選挙を「復興以上に大事」と述べた桜田義孝前五輪相や、安倍首相と麻生副総理を忖度(そんたく)して予算をつけたと語った塚田一郎前国土交通副大臣が辞任している。

 政権発足から今の地位にある麻生氏の問題発言も枚挙にいとまがない。憲法改正をめぐり、「ある日気づいたら、ワイマール憲法がナチス憲法に変わっていた。あの手口に学んだらどうかね」と述べたこともある。

 政治家としておのおのが自ら襟をただす。そのためにも「戦争」発言への対処をあいまいにしてはならない。

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