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 希望する人が70歳まで働けるよう、雇用機会の確保を企業の努力義務とすることが検討されている。近く政府の成長戦略に盛り込まれ、具体的な制度作りの議論が始まる見通しだ。

 少子高齢社会を乗り切るため、高齢者も元気なうちは働き、社会保障の「支え手」になってもらおう。そんな考えだ。

 体力・運動能力が向上し、60代以上で働く人の約4割が「働けるうちはいつまでも」と望んでいるとの調査もある。希望する人が活躍できる場を広げることは悪くない。

 だが、健康や生活の状況は様々だ。働きたくても働けない人もいる。70歳まで働くことが押しつけとならぬよう、慎重な制度設計が必要だ。

 今は希望者が65歳まで働けるよう、定年廃止、定年延長、契約社員などでの再雇用のいずれかの方法をとることが、企業に義務づけられている。60代前半の就業率はすでに7割近い。

 政府は、この年齢を70歳まで引き上げて努力義務とし、起業や他企業への再就職の支援、フリーランスで働く人やNPO活動への資金提供などを、選択肢に加える方針だ。

 起業やフリーランス契約は、多様な働き方につながり得る半面、収入が不安定になるなど雇用関係がないことによる課題もある。働く人が安心できる環境を整備したい。

 現在、約8割の企業が、いったん退職してから契約社員などで再雇用する方法を採用している。退職前と仕事の内容が変わらないのに賃金だけが下がり、納得出来ないと訴訟になるケースも起きている。

 一方で、若い層の採用や給与に悪影響を与えても困る。働きに見合った賃金体系、評価の仕組みを整えることが急務だ。

 加齢に伴い衰えが出ることへの目配りも欠かせない。昨年発生した労災死傷事故の約4分の1は60歳以上が占め、年々増加傾向だ。安全に働ける職場の工夫、短時間勤務やテレワークなど無理のない働き方も、考えなければならない。

 働く高齢者が増えることを見込み、政府は原則65歳から支給される年金を「繰り下げ受給」できる仕組みを拡充する検討を始めた。受給を遅らせるほど年金額は割り増しされる。

 だが、今でも年金の受給は70歳まで遅らせることができるのに、選ぶ人はほとんどいない。仕事をしていても賃金が安く、年金がないと生活できない人が多いのではないか。

 この検討が将来、年金の支給開始年齢を70歳に引き上げる布石ではないかと心配する声もある。不安をあおらぬよう、政府には丁寧な説明が求められる。

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