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 安倍首相がきのう、新天皇即位後初の国賓として来日したトランプ米大統領と通算11回目となる首脳会談を行った。

 トランプ氏は6月にも主要20カ国・地域(G20)首脳会議のため大阪を訪れる。4月には首相が訪米しており、異例の3カ月連続の首脳会談だ。

 首相にすれば、夏の参院選を前に、トランプ氏との「蜜月」をアピールし、政権支持につなげたい思惑があるのだろう。

 ■共同文書の発表なく

 過去に米大統領が国賓として来日した際には、合意事項を共同文書としてまとめている。

 前回14年のオバマ氏の時は、尖閣諸島への日米安保条約の適用を明記した共同声明が、前々回96年のクリントン氏の時は、冷戦後の日米安保条約の意義を再確認した日米安保共同宣言が、それぞれ発表された。

 それに対し今回は、共同文書は準備されず、焦点である日米貿易交渉についても、早期合意に向けて議論の加速を確認するにとどまった。

 首相が強調するように、新天皇と会見する最初の外国首脳をトランプ氏とすることで、日米同盟の絆を内外に強く印象づけることに最大の眼目があり、具体的な両国の懸案をめぐる調整は先送りされた形だ。

 それだけに、トランプ氏をもてなす過剰な演出が際だった。

 会談前日の日曜日、両首脳はまず千葉県のゴルフ場で16ホールを回り、昼食は米国産牛肉をつかったダブルチーズバーガーに。夕方は両夫妻そろって国技館で大相撲を観戦し、トランプ氏自ら土俵にあがっての米国大統領杯の贈呈。夜は六本木の炉端焼きで歓待した。

 国賓を丁重に迎えるのは当然だが、度が過ぎると言わざるをえない。首脳同士の「社交」はあくまで外交のためにある。その内実が問われねばならない。

 ■選挙を意識し封印か

 では、会談の中身はどうか。

 首脳会談の冒頭、トランプ氏は日米貿易交渉について「おそらく8月に両国にとって素晴らしいことが発表されると思う」と語った。ツイッターには「大きな数字を期待するのは7月の選挙の後だ」と投稿した。

 農業分野の交渉が参院選に影響しないよう、首相に配慮しているのだろう。一方、トランプ氏は共同会見で、環太平洋経済連携協定(TPP)に縛られない考えも明らかにした。TPP以上の譲歩はできないという日本の原則は眼中にないようだ。

 トランプ政権はすでに日本製のアルミ・鉄鋼に追加関税を課し、日本を含む外国からの輸入車に追加関税をかける検討もしている。いくらトランプ氏に抱きつき、個人的に良好な関係を深めたとしても、限界があるのは明らかだ。

 対北朝鮮政策では、拉致問題の解決に米国が協力することでは一致したが、今月上旬に北朝鮮が発射した短距離弾道ミサイルへの見解にはずれがあった。共同会見で首相が国連安保理決議に違反すると明言したのに対し、トランプ氏は問題視しない考えを示した。日米の立場は「完全に一致」しているという首相の言い分は、うわべを取り繕っているだけではないか。

 ■イラン訪問が試金石

 トランプ氏は就任以来、地球温暖化対策のパリ協定から脱退するなど、多国間合意に背を向け、中距離核戦力(INF)全廃条約からの離脱や在イスラエル米大使館のエルサレム移転の強行など、国際社会の秩序の維持に逆行する振る舞いを重ねている。欧州など同盟国を軽視する姿勢も歴代の米大統領のなかで際立っている。

 そんなトランプ氏にただ追従しているだけと見られれば、国際社会における日本の信用は損なわれる。首相がトランプ氏との強固な関係を誇るのなら、それを国際協調や多国間の枠組みの立て直しに活用しなければならない。

 首相が6月中旬で調整しているイラン訪問は、その試金石となろう。

 トランプ氏は昨年、イランとの核合意から脱退し、一方的に圧力を強めた。これに反発するイランが対抗措置を表明しており、中東では軍事的な緊張も高まっている。

 伝統的にイランと良好な関係を維持してきた日本が果たせる役割はあるはずだ。ただ、そのためには、緊張を高めた米側にも妥協を促す姿勢が不可欠だ。米国の代弁者では、仲介者たり得ない。

 首相が自負する日米の「揺るぎない絆」を礎に、国際社会の平和と安定のために、いま日本外交がすべきことは何か。

 第一に、米国が間違った方向に向かわないよう、トランプ氏に直言すること。

 第二に、経済も安全保障も、ルールに基づく多国間の協力を重んじること。

 第三に、自由と民主主義、基本的人権、法の支配といった価値を基軸にすること。

 トランプ氏に擦り寄るだけでは、国際社会における日本の責任は果たせない。

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