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 欧州の統合が揺さぶられる事態は、何とか避けられた。再び推進の流れを取りもどすには、さまざまな格差へのきめ細かい取り組みが欠かせない。

 欧州連合(EU)の立法機関である「欧州議会」の選挙があった。加盟28カ国で5年ごとに行われ、今回は特にEUそのものの信認が問われた。

 EUの支持派は、3分の2の勢力を守る見込みだ。EU懐疑派で、移民の排斥などを掲げる右派は議席を増やしたが、事前の予想ほどは伸びなかった。

 皮肉にも支持派に追い風となったのは、EU離脱をめぐる英国の混迷だった。「人々は離脱の現実を知り、投票先を決めている」。トゥスクEU首脳会議常任議長は、そう安堵(あんど)した。

 実際、投票率は5割を超え、この20年間で最高だった。特に投票率が上がったドイツやデンマークなどで懐疑派が伸び悩んだのは、英国を背景にした危機感の表れだったのだろう。

 だが、難局が去ったわけではない。債務危機や難民の流入、テロなど相次ぐ難題を経て、統合に異議を唱える訴えは一定の広がりを見せている。

 今回、イタリアで第1党に躍進した右翼政党「同盟」の党首は語った。「EUのルールは何十年間も、官僚と銀行家のためにあった。それを変えるための仲間は至る所にいる」

 そうした主張がなぜ民衆の間に共鳴するのか、EUと各国の指導者は考えねばなるまい。

 経済大国ドイツとギリシャやイタリアなどの間で広がる国家間格差。ドイツやフランスの国内でも高まる経済階層の不満。そうした平等・公正をめぐる政治の目配り不足が、反移民・反EU感情に結びついている。

 それでも欧州議会が今年行った世論調査では、域内の7割近くが「EU加盟によって自分の国は利益を得ている」と答え、1983年以来で最高だった。問題は、その利益の分配であろう。拡大路線を走ってきたEUは少し立ち止まり、しっかり足元を見つめる時だ。

 今回の選挙では、EUへの賛否を超えた潮流も見せつけた。中道の既成政党が沈む一方、新興右派のみならず、緑の党などの左派も伸びるという世論の分極化がめだった。

 英国の二大政党の退潮や米国のトランプ現象などが示すように、既存の政治は各地で逆風を浴びている。細分化する民意をすくい取る難しさは、ネット時代の世界共通の課題だ。

 国境の垣根をなくすという壮大な実験に挑んでいる欧州は、古くから政治思想の先進地でもあった。寛容で持続可能な社会づくりへ向けて、これからも範を垂れる姿を期待したい。

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