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 証券業トップの野村証券で、「市場の公正」より目先の営業を優先する行為がまたも繰り返された。会社に根深く染みこんだ体質を変えられるのか。深刻な問いが突きつけられている。

 外部の弁護士らによる野村の特別調査チームや金融庁によると、野村のストラテジストや営業社員らが、東京証券取引所の市場再編に関する未公表の情報を、外部の機関投資家に漏らしていた。

 東証の「市場構造の在り方等に関する懇談会」の委員を務めていた野村総合研究所のフェローが、検討中の最上位市場への上場基準が時価総額で「250億円に落ち着く可能性が高くなっている」との情報を野村側に伝えた。営業社員らは想定されていた500億円より低くなる点に注目し、この情報を顧客の勧誘に利用した。

 個別企業の情報ではなく、金融商品取引法上のインサイダー情報にはあたらない。だが特別調査チームは、懇談会の委員には守秘義務があったと認定。金融庁も、特定の顧客だけに検討状況を知らせて勧誘するのは「資本市場の公正性・公平性に対する信頼性を著しく損ないかねない行為」として業務改善を命じた。

 いずれも当然の判断だろう。東証は、民間企業が運営するが、日本経済の主要なインフラの一つである。その見直しを議論する懇談会の場で得た情報を、自社の営業に用いた野村の責任は極めて重い。

 2012年にも、野村は企業の増資をめぐる情報を漏らし、業務改善命令を受けた。その後、個別企業の情報については情報管理を徹底したが、制度をめぐる情報には具体的規定がなかった。そのため社員の一部には、今回の行為は「問題ない」との意見もあったという。

 コンプライアンスを表面的に理解し、狭い意味の法令順守に限定していた実態が露呈したと言わざるをえない。7年前に体制を刷新し、トップが「会社を根底から作り直す」と体質改善を図ってきたにもかかわらずこの有り様では、立て直しは容易ではないだろう。

 野村はトップの役員報酬を3カ月間、3割減額する処分を発表したが、金融庁はさらなる責任の明確化を求めている。社債発行などの主幹事から、野村を外す企業も相次いでいる。

 野村グループは、自らの倫理規程の冒頭に「金融資本市場において適切な資金循環を促すという証券業の本質に立脚する」と掲げている。「機密情報の濫用(らんよう)」を戒める項目もある。日本の資本市場の牽引(けんいん)役であり続けようと望むなら、こうした文言の実行が最低限の条件になる。

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