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 国民が納得できるよう、安倍首相は自らの言葉でしっかり説明しなければならない。

 先の日米首脳会談でトランプ米大統領と話し合った、貿易交渉についてだ。

 経済人を前にした最近のあいさつでは、「幅広い物品を対象に交渉を進めていく。そう簡単な作業ではない」と語った。両国の見解の違いも踏まえ、じっくり話し合う姿勢を示そうとしたのかもしれない。

 しかし、首脳会談やその前後のトランプ氏の発言を思い出すと、首相の言葉を額面通りに受け取ることはできない。

 トランプ氏は会談の冒頭、「おそらく8月に、両国にとってすばらしいことが発表されると思う」と述べた。会談の前日には、ツイッターで「多く(の成果)は7月の選挙後まで待つ」と発信している。

 米国が求める農産品の関税引き下げを選挙前に合意するのは政治的に厳しい、という日本の事情に配慮する。その代わり、参院選後に速やかに結論を出してほしい。そう言っているかのようだ。合意の時期を、両首脳はどう考えているのか。

 農産品について、昨年の首脳会談での共同声明には、過去の経済連携協定で約束したものが最大限であるという日本の立場を、米国は尊重するとある。日本は、環太平洋経済連携協定(TPP)の水準を引き下げ幅の限度とする認識だ。

 しかし今回の会談後の共同記者会見で、トランプ氏は質問されてもいないのに、「とても重要なので付け加えたい」と切り出し、「私はTPPとは関係がない。何にも縛られていない」と言い切った。

 貿易交渉を担当する茂木経済再生相は、トランプ氏の発言は「米国がTPPから離脱したという事実を述べた」との解釈を示す。しかし米国が合意を急ぎたい農産品の扱いで、両首脳の認識が本当に一致しているのか、疑問は拭えない。

 トランプ政権が、日本などからの輸入車を安全保障上の脅威とみなし、関税引き上げを検討していることに、首相はきちんと抗議したのか。これも明らかではない。

 具体的な内容を、すべてつまびらかにすることは難しいかもしれない。ただ、米国との貿易交渉の行方は、日本経済に大きく影響する。トランプ発言が残した疑問に答え、国民の不安を解消できるのは、直接向き合っている首相だけだ。

 交渉はどの方向に、どんな速度で進んでいるのか、首相は国民にしっかり説明してほしい。国会は予算委員会を開くなどして、その機会をつくるべきだ。逃げてはならない。

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