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 問題が深刻だからこそ、首脳と会って打開を探るべきだ。相手が折れるまで会わないというのでは、あまりに雅量を欠く。

 安倍首相による韓国への姿勢である。大阪で今月末にG20首脳会議が開かれるが、その際に来日する文在寅(ムンジェイン)大統領との会談がいまだ設定されていない。

 異例となる見送りの可能性も取りざたされる。韓国側の要請に対し、日本側が難色を示している。徴用工問題での進展が見込めないなどの理由だ。

 徴用工問題では韓国の大法院(最高裁)が昨年秋、従来の韓国政府の見解と異なる判断を示し、日本企業に賠償を命じた。以来、文政権は対応を検討中としてきたが、半年以上が過ぎても明らかにしていない。

 だが、それを理由に首脳会談に応じないというのでは、逆に日本政府がこれまで主張してきた考え方と矛盾する。

 日本側はこれまでの日韓関係をめぐる交渉のなかで、すぐには解決できない歴史問題については他の課題と切り離すべきだと訴えてきた。

 いまのような態度では、慰安婦問題の進展を首脳会談の条件とした朴槿恵(パククネ)・前政権とそっくりではないか。

 歴史問題以外にも日韓には懸案が横たわる。

 日本は今月から韓国産水産物の輸入の際の検査を強化した。日本政府は否定するが、福島第一原発事故の被災地などの水産物を全面禁輸している韓国への対抗措置とみられている。

 食の安全・安心をめぐる繊細な問題であり、辛抱強い交渉で改善を図るほかあるまい。意趣返しのような措置が続けば、両国間の盛んな市民交流にまで悪影響を及ぼしかねない。

 一方で韓国政府も、なぜここまで厳しい状況になったのか、冷静に自省すべきだ。

 文政権は、北朝鮮との関係改善を最優先に取り組んでいる。そちらに没頭するあまり、対日政策をおろそかにしたツケが回ってきた――そんな論調が韓国内で出始めている。

 G20にかかわらず、韓国政府は徴用工問題に対応する決断を急ぐべきだ。単に失政の批判をかわすために、会談をめざすのならば本末転倒である。

 日韓は先月の外相に続き、今月は防衛相同士がシンガポールで会った。安倍首相は、北朝鮮の首脳とは前提条件なしに会うと言うが、一方で韓国首脳を遠ざけるのでは朝鮮半島政策に取り組む本気度が疑われる。

 日韓の両首脳とも、自らの国内の支持基盤への配慮よりも、未来を見すえる大局観をもって外交に臨むべきだ。隣国同士を互恵の関係に導く政治の良識こそを発揮してもらいたい。

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