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 がん治療の姿が変わりつつある。従来の治療がきかなくなった白血病の患者向けの新たな治療法の製剤キムリアが先月、公的医療保険の対象になった。手術、抗がん剤、放射線に続く「第4の治療法」と言われる免疫療法の一つだ。

 がんの原因となる遺伝子異常を一度に100種類以上調べることのできる「パネル検査」も、保険適用が決まった。遺伝子異常のパターンに合わせて治療法を選ぶ「がんゲノム医療」が本格的に始まる。

 患者にとっては朗報だ。一方、キムリアの薬価は過去最高の3349万円。患者から採取した免疫細胞のがんへの攻撃力が高まるよう遺伝子を操作し、体内に戻す。個々の患者に合わせた治療が高額となる要因だ。

 遺伝子組み換えや細胞培養などの技術を用いた薬は、今後も次々と登場する見通しだ。欧米では承認済みで日本で未承認の薬を調べた国立がん研究センターの昨年の調査では、1カ月の薬代が100万円超のものがキムリアを含め45種類あった。

 保険適用になると、高額の新薬も一定の自己負担で利用できる。キムリアの場合、年収370万~770万円なら自己負担は40万円程度。残りは公的医療保険から支払われる。

 キムリアを使う患者は年間200人強、販売額は約72億円と見込まれ、直ちに医療保険の財政が圧迫される状況ではない。だが、必要な医療を安心して受けられる国民皆保険を将来にわたって守るには、備えも考える必要がある。

 まずは納得できる薬価にすることだ。今も原価の開示度に応じて薬価の算定で差をつける仕組みがある。透明性を高める工夫を重ねたい。

 年4回薬価を見直すルールも導入され、やはり高額な新薬で話題となったオプジーボは当初の約4分の1まで価格が下がった。4月からは高額な薬などの治療効果が価格に見合うか検証して調整する仕組みが始まり、キムリアも対象になった。

 ただ価格を抑え過ぎて新薬の開発意欲がそがれたり、効果の高い新薬が日本で利用できなくなったりしても困る。薬価での対応には限界がある。薬の使い方などにも目を向けるべきだ。

 飲み忘れなど使わずに余らせた薬は、75歳以上の高齢者だけで年間475億円との推計もある。残薬や重複投薬を減らす取り組みを急がねばならない。

 市販薬で代替できる軽症用の薬は保険の対象から外すよう求める声もある。個人が負担し切れないような高額な費用に備えるのか、日常的なものをカバーするのか、公的保険のあり方も今後、議論が必要だろう。

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