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 1週間前に自慢げに紹介した有識者の報告書を、選挙の逆風になるとみるや一転してこき下ろし、受け取りを拒む。相次ぐ批判も報告書ごと「なかったこと」にして、議論から逃げる。あけすけな小心さと幼稚な傲慢(ごうまん)さが同居する政府与党の姿には、あきれるしかない。

 金融審議会の作業部会がまとめた「高齢社会における資産形成・管理」という報告書のことだ。長寿時代には資産の寿命も延ばす必要がある。長期・積み立て・分散投資が大事で、金融機関も顧客のニーズに応えるべきだ――そんな内容だ。

 前提として、公的年金の水準が「今後調整されていく」、つまり現役世代の平均収入に対する年金額の割合が下がっていくことが指摘されている。今の高齢者(2人世帯)の支出の平均は月約26万円で、年金などの収入約21万円との差額5万円は資産の取り崩しで賄われているという数字も示された。30年分で約2千万円との計算になる。

 麻生金融相は当初、100歳まで生きる時代には人生設計を考え直す必要がある、といった説明をしていたが、11日には報告書を受け取らないと表明した。自民党の二階俊博幹事長が報告書を批判し、「我々選挙を控えておるわけですから、そうした方々に迷惑を許すようなことのないように注意したい」と発言した直後だった。

 「年金不足」が夏の参院選の争点になることを恐れたのだろう。語るに落ちるとは、このことである。

 報告書は、学者や金融業界関係者らが昨秋来12回の会合を重ねてまとめられた。金融庁が事務局を務め、会合は公開、資料や議事録も公表されている。そもそも麻生氏の諮問を受けて設けられた作業部会だ。議論を頼んでおきながら、風向きが悪くなると背を向けるのでは、行政の責任者の資格はない。審議会は政府を代弁すべきだという「本音」が露呈している。

 麻生氏は「これまでの政府の政策スタンスとも異なっている」という。異論があるなら、受け取ったうえで反論すればいい。不正確なところがあるのなら、より正確なデータや解釈を示すべきだ。

 確かに、報告書が資産の取り崩しの平均値を「不足」や「赤字」と表現したのはやや乱暴にみえる。だが、年金の水準が下がり、それだけでは豊かな老後が送れないかもしれない国民がいるのは動かしがたい事実だ。

 5年に1度、年金の給付水準の長期的な見通しを示すための財政検証も、例年より公表が遅れている。選挙後に議論を先送りしようとしているのなら、許されることではない。

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