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 平和主義を掲げる極東の国、日本の首脳による異例の仲介外交である。今後の広い国際貢献をめざす上でも、公平で実効的な仲裁を全うしてほしい。

 米国とイランとの緊張が高まるなかで、安倍首相がイランを訪ね、ロハニ大統領、ハメネイ師と会談した。現職の首相による同国訪問は41年ぶりだ。

 ハメネイ師は最高権力者だが、西側の首脳とはあまり会わない。その指導者と直接、意思疎通した意義は大きい。

 米・イランの双方と良好な関係をもつ先進国として、日本が緊張緩和に向けて汗をかくのは理にかなった試みである。

 日本は原油の8割を中東に頼るが、中東の和平の模索は国際秩序全体の安定に資する。日本が誠実な仲介者たりえるのか、今回が試金石といえよう。

 まず日本の立ち位置を明確にする必要がある。米国との緊密な同盟関係が前提ではあるが、同時に米国に必要な行動の説得ができる健全な関係がなければ仲裁は成り立たない。

 日本外交の基軸は対米追随ではなく、平和主義と国際協調などの普遍的な理念にあることを確認せねばならない。それは仲裁だけでなく、日本の対外政策全般の重みに関わる問題だ。

 安倍氏はイラン訪問に続いてトランプ米大統領と向きあい、直言すべきだ。イランの指導部を含めて誰も対立の激化を望んでおらず、イランの核開発をめぐる国際合意を立て直すことが賢明な道である、と。

 そもそも、今の危機を生み出したのはトランプ政権である。長年に及ぶ多国間外交の成果だった核合意を一方的に破棄したことが問題の発端だ。

 ハメネイ師は安倍氏に対し、核兵器の製造・保有・使用の意図はないと語った。穏当な落着を欲している証しだろう。

 トランプ氏も圧力の一方で、対話も口にしている。安倍氏はハメネイ師らの肉声を伝えるとともに、トランプ氏に軍事的な脅しをやめさせるべきだ。

 そのうえで、両者のメンツを保ちつつ、イラン原油の輸出再開と核開発の凍結を両立させる手立てを、欧州など他の仲裁国と連携して探る必要がある。

 安倍氏はかねて「積極的平和主義」を唱えてきたが、実質は対米同盟を偏重する概念にすぎなかった。国際的に尊ばれる貢献をめざすなら、日本の特性を生かした外交による和平活動の幅と密度を高めるべきだ。

 今月の大阪でのG20首脳会議では、イラン問題の関係国が顔をそろえる。そこで緊張緩和の意思を確認するなど息長く仲介を続けたい。参院選前のパフォーマンスに終わらせるならば、関係国の失望をかうだけだ。

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