[PR]

 世界最大の石油埋蔵量を抱える南米の国、ベネズエラが深刻な人道危機に陥っている。

 栄養失調や医薬品不足で命を落とす子どもたち。停電が慢性化した市街地。ガソリン不足の車があふれる皮肉な産油国の窮状が報じられている。

 ここ数年で人口の13%にあたる400万人以上が国外に逃れ出た。国内に残る国民も、4人に1人にあたる約700万人が人道支援を必要としていると、国連は推計している。

 これだけ危機が深まっているというのに、国際的な緊急支援は現地に入ることすら難しい。マドゥロ大統領率いる政府が、大規模な危機の事実を正面から認めないからだ。

 百数十万%超とされるインフレ率や乳幼児の死亡率などの統計も発表してこなかったという。失政の批判を逃れるための実態隠しの色が濃い。

 国民の苦境を顧みないマドゥロ政権の責任は重大だ。即座に国連などに協力して実態調査をし、緊急支援を行き渡らせるべきである。

 ベネズエラは今、政権をめぐり分裂している。自ら暫定大統領就任を宣言したグアイド国会議長と、マドゥロ政権との対立が膠着(こうちゃく)状態にある。

 だが人道支援を阻むものは、現政権の独裁的な姿勢だけではない。政争の背後にある国際関係が厚い壁となっている。

 米国はグアイド氏を支持し、体制転換の圧力を強めている。中国とロシアは現政権に肩入れしており、間接的な大国間のにらみ合いになっている。

 武力介入の可能性も否定しないトランプ米政権の言動は危うい。一方、現政権の強権を黙認する中ロも無責任である。

 米欧と中ロの対立の構図は、近年の国際問題で繰り返されている。内戦が続く中東シリアの人道支援が滞ったのも、大国間の利害対立により国連安保理の合意ができなかったからだ。

 2005年の国連サミットでは、「保護する責任」の概念が確認された。国家が国民を守る責任を果たさない場合は、国際社会がその義務を負う、とした画期的な原則だった。

 だが今のベネズエラ問題を含め、近年、「保護する責任」の論議は低調だ。体制転換を認めるかや内政不干渉の原則などをめぐり、米欧と中ロの根源的な論争の出口が見えていない。

 ベネズエラの将来は、国民による公正な民主的選択に委ねるほかに道はない。だが、そこに至る前に、いまそこにある人道危機への対処が最優先だ。

 破綻(はたん)国家の悲劇を繰り返さないために、米中ロは非難の応酬をやめ、人道支援に絞った合意を導く手法を見いだすべきだ。

こんなニュースも