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 特定の人種や民族を侮辱し、憎悪をあおる言動の解消をめざすヘイトスピーチ対策法が施行されて、今月で3年になった。

 違反しても罰則規定のない、いわゆる理念法だ。だが、政府や自治体が対応に乗り出すようになり、死ね、殺せといった聞くに堪えない罵声を浴びせるデモの件数が減るなど、相応の効果は出ている。

 司法の場でも、ヘイト行為が行われる恐れが高いデモを事前に差し止めたり、差別的な投稿をまとめたサイトが個人の名誉を傷つけたとして、運営者に賠償を命じる判決が言い渡されたりするようになった。捜査当局が刑法の侮辱罪や名誉毀損(きそん)罪を適用して立件し、罰金などの刑罰が科された例もある。

 「ヘイトを許さない」との意思を国会が法律の形で明らかにしたことが、行政を変え、裁判所や捜査の背中を押している。法を定めた意義は大きい。

 もちろん、これで問題が解決したわけではない。

 匿名を隠れみのにして、ネット上には依然として差別的な発言があふれる。先月、川崎市で登校中の児童たちが男に襲われる事件が起きると、「犯人は在日朝鮮人」というデマが拡散した。大きな災害のたびに、特定の民族を名ざしして「犯罪に走る」などの流言が飛ぶ事態も繰り返されている。

 選挙運動の中で排外的な主張が展開されたこともあった。活動家が16年の東京都知事選に立候補し、在日朝鮮人らへの偏見に満ちた演説を重ねたのだ。男性がつくった政治団体は各地の選挙に候補者を立て、外国人排斥を政策の柱にすえている。

 あからさまな違法表現や個人攻撃は控えて制裁を避けつつ、ヘイトに走る。手口が巧妙・陰湿化しているとして、さらなる対策を求める声は強い。

 法務省は3月、個人ではなく集団を対象とする言動に対しても、人権救済措置に動く方針を打ち出した。例えば、特定の地域や学校の名を挙げた差別的な投稿がネット上に見つかれば、運営者に削除を要請する。

 東京都などはヘイトの恐れのある集会に施設を貸すのを制限できる条例を設けた。差別根絶条例の制定をめざす川崎市は、罰則規定を盛り込むかどうか、検討を進めている。正当な表現活動との見きわめが難しく、過度な制約になりかねないとの理由で、対策法では見送られた措置だ。現場を抱える自治体の取り組みを注視したい。

 一足飛びの解決策はない。いまの制度で足りない点を、一つひとつ丁寧に検証して対処を重ねながら、ヘイト根絶の意識を社会に根づかせていく。その歩みを止めてはならない。

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