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 会期末まで1週間、ようやく実現した今国会初の党首討論は、ほぼすべて年金問題に費やされた。夫婦の老後の資産として2千万円が必要――。そんな金融庁審議会の報告書を契機に広まる年金への不安にどう向き合うのか。与野党の議論はまだ始まったばかりだ。

 野党がまず批判したのは、報告書の受け取りを拒否した安倍政権の対応だ。立憲民主党の枝野幸男代表は、森友・加計問題にも通じる「見たくない事実はなかったことにして、ごまかす姿勢」が基本にあると指摘。国民民主党の玉木雄一郎代表も「都合の悪いことをなきものにする政権の態度が国民に不安を与えている」と追及した。

 これに対し、安倍首相は「100年安心」を掲げた04年の年金改革で、少子高齢化の進行に合わせて給付を抑えるマクロ経済スライドを導入したことなどをあげて、年金の持続可能性に対する国民の不安には応えてきたと反論。一方で、年金の給付水準の長期的な見通しを示す5年に1度の財政検証の早期公表の求めには応じなかった。

 今回の討論では、夏の参院選を意識してか、野党側からの提案も目立った。枝野氏は、医療・介護など、社会保障の自己負担総額に上限を設ける「総合合算制度」の導入や、介護・医療従事者の賃金の抜本的な底上げを訴えた。

 玉木氏は外需に頼らない、家計重視の経済政策への転換を主張。共産党の志位和夫委員長は、高額所得者からの保険料を増やし、マクロ経済スライドを廃止するよう求めた。

 年金を政争の具とせず、与野党が共通の土俵にのって、冷静に議論しようというのであれば歓迎だ。しかし、首相はマクロ経済スライドの廃止こそ否定したものの、それ以外の提案に見解を述べることはなかった。これでは議論は深まらない。

 そもそも安倍政権は、参院選を前に失点を回避しようと、今国会では極力、論戦を避けることを基本姿勢としてきた。広く国政の課題を議論する衆参の予算委員会は、野党の再三の求めにもかかわらず、4月以降、開かれていない。

 党首討論の開催も昨年6月以来、1年ぶりだ。野党4党首合わせて45分という限られた時間では、年金問題ひとつに絞っても議論は深まらず、外交・安全保障などその他の課題は、全く触れずじまいとなった。

 会期末まで、残された時間は少ないが、政権与党は予算委員会の開催に応じ、年金はじめ内外の諸課題を巡る議論に堂々と向き合うべきだ。きのうの党首討論だけで、論戦を逃げ切ろうとするのは許されない。

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