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 実刑確定後も収容に応じなかった男が、身柄を確保しようとした検察事務官らに抵抗し、刃物を持って逃げるという、あってはならない事件が起きた。

 男は約90時間後に逮捕されたが、地元の小中学校が休校するなど大きな影響が出た。様々な角度からの検証が必要だ。

 まず問われるべきは、逃走を許した検察の対応である。

 男は傷害や覚醒剤取締法違反などの罪に問われて一審で実刑判決を受け、控訴後に保釈された。今年2月に判決が確定したのに再三の出頭要請に応じず、4カ月が経過していた。

 そんな勝手が許されていたこと自体、理解を超える話だ。

 逃走した当日は、横浜地検の事務官と警察官の計7人で男の自宅に出向いた。それまでの態度から素直に応じないことも当然想定すべきケースだ。態勢や装備にぬかりはなかったか。

 そしてお粗末きわまりないのが逃げられた後の対応である。地検が事態を公表するまでに3時間、警察による緊急配備までに実に4時間を要した。

 住民の安全をどう考えていたのだろう。組織内部、そして相互で情報はどう伝わり、いつ、どんな判断がされたのか。詳しく解明・公表して教訓にしなければならない。

 気になるのは、男が保釈された事実をとらえて、保釈の制度や運用全般を問題視する言説が、一部のメディアなどに広がっていることだ。

 日本では長期の身柄拘束が当たり前に行われ、人権を過度に制約してきた。だが近年、いくつもの冤罪(えんざい)事件や裁判員制度の導入を機に見直しが進み、保釈が認められる例が増えている。この流れを押し戻すような動きに賛成することはできない。

 もちろん被告が行方をくらまして裁判が続行できなくなったり、刑を執行できなくなったりする事態が続けば、司法に対する国民の信頼は傷つく。時代の変化に応じた逃走防止策を講じる必要はあるだろう。

 例えば、今は保釈後の逃走そのものを罪に問う規定はなく、行方を追う手法も限られる。今回の事件では男が抵抗したため公務執行妨害容疑が適用されたが、そうした事情がなければ、強制手続きによって電話の通話履歴を調べることもできない。改善すべき点はないか。

 日産自動車のゴーン前会長の事件では、住居への監視カメラの設置などの条件をつけた保釈が注目された。GPS機器を装着させる国も少なくないが、日本では議論の蓄積を欠く。

 捜査・裁判上の要請と人権とのバランスをどこに求めるか。社会全体で冷静かつ着実に、検討を深めていかねばならない。

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