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 人権を尊重し、社会の信頼にこたえる。放送に携わるすべての人が守るべき基本姿勢を著しく欠いた不祥事が、民放で相次いでいる。

 読売テレビの報道番組は、バラエティーコーナーの中で、保険証の提示を求めたり、からだに触ったりして、一般人の性別を確認する街頭ロケのVTRを流した。

 関西テレビのバラエティー番組は、慰安婦問題に関連した議論の中で、夫が韓国人だという作家が、韓国人気質を「手首切るブスみたいなもん」と評した発言を、そのまま紹介した。

 5月に放送された両番組は、いずれも事前に内容をチェックしていながら、当事者や関係者を傷つけ、差別や偏見を助長しかねないという思いに至らなかったという。不見識とのそしりは免れまい。

 とりわけ関西テレビは、この発言は作家独特の比喩で、差別的な意図はなかったとしていた。判断の誤りを認めたのは、放送から1カ月後。配慮に欠けていたとしたが、人権侵害にあたるかどうかは明確にしなかった。本音や過激さを売りにした「萎縮しない番組作り」(同社幹部)のツケではないか。

 人権感覚を欠いた番組づくりが厳しい批判を浴びたのは、関西の2局にとどまらない。

 一昨年は、男性同性愛者の蔑称とされる「ホモ」という言葉を名前に織り込んだキャラクターを30年ぶりに登場させたフジテレビが、視聴者からの抗議を受けて謝罪した。

 今年2月には、大阪市の西成地区を「行かない方がいい地域」と差別的に表現、事実を確認しないまま、地元の高校が問題校であるかのように伝えたテレビ朝日が、やはり謝罪に追い込まれている。

 バラエティーとして許容範囲であり、目くじらを立てる必要はないとの声も一部にはある。しかし、日本民間放送連盟の放送基準が前文に掲げるように、放送局には公共の福祉に寄与する使命がある。視聴率優先で人権侵害に目をつぶるようなことがあってはならない。業界全体で教訓を共有し、再発防止を徹底すべきだ。

 民放連は今月、「放送の価値向上・未来像」に関する中間報告をまとめた。冒頭に挙げたのが「放送倫理の向上」である。外部の有識者らによる番組審議会の意見の活用こそ盛り込まれたが、不祥事を断ち切るには、危機感も具体策も、まだまだ足りないといわざるを得ない。

 玉石混交の情報が行き交うネット空間とは異なる信頼性を自負するのであれば、緊張感をもって自主自律の努力を積み重ねていくほかあるまい。

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