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 通常国会が閉会した。取りざたされた衆参同日選は見送られ、参院選は来月4日公示、21日投開票が決まった。

 与野党は選挙戦に走り出しているが、まずはこの国会を振り返り、政治の現在地を改めて確認しておきたい。

 ■論戦を封印した与党

 「国権の最高機関として議論を尽くし、行政監視機能を果たす」。開会直前の1月中旬、与野党の国会対策委員長が合意した。財務省による公文書改ざんなど、政府の不祥事が相次ぎながら、十分なチェック機能を果たせなかった昨年の通常国会の反省を踏まえたものだ。

 だが、その後の150日間の会期であらわになったのは、政府与党が一体となって情報を出し渋り、論戦の機会を奪い去る荒涼たる言論の府の姿だった。

 国民の代表が集う国会の機能不全は、民主主義の危機そのものである。しかし、安倍政権と与党にその自覚はなさそうだ。

 国会で行政監視の主舞台となる予算委員会は、予算成立後の4月以降全く開かれず、開催日数は過去10年で最少となった。

 国会の規則では、委員の3分の1以上の要求があれば、開催が義務づけられているにもかかわらず、参院の与党出身の委員長は野党の求めを無視した。

 説明責任を軽んじ、議論を嫌うのは、この政権の体質といっていい。一昨年は、憲法に基づく臨時国会の召集要求まで放置を決め込んだ。

 「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ」。内閣と国会の関係を定めた憲法の規定だ。国会に出席して自らの施政を説明し、議員の質問に誠実に答える。その責務を安倍首相が果たしているとは到底いえない。

 老後の資産に2千万円が必要とした金融庁審議会の報告書に世論の批判が集まると、受け取りを拒否して、なかったことにし、国会での議論にほとんど応じなかった。年金の給付水準の長期的な見通しを示す財政検証も、結局、国会開会中に公表することはなかった。

 内政・外交とも徹底した議論が必要な課題は山積している。森友・加計問題の解明は一向に進まず、統計不正の検証も不十分なままだ。

 参院選前の失点はできるだけ避けたい――。「議論なき国会」をもたらした政権の責任は厳しく問われねばならない。

 ■「改元」「外交」を演出

 この間、国会の外で政権は何に力を入れていたのか。

 憲政史上初の天皇退位をめぐっては、首相自ら記者会見し、新元号に込めた思いを語った。「新時代の幕開け」を連呼し、天皇の代替わりに合わせた10連休の実施で、「令和フィーバー」とも呼ばれた祝賀ムードを演出した。

 首脳外交にも余念がなかった。米国のトランプ大統領とは4、5月と続けて首脳会談を行い、蜜月をアピール。とりわけ新天皇即位後初の国賓として招いた際は、一緒に大相撲を観戦するなど、親密ぶりを強く印象づけた。

 あすから大阪で主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が開かれる。トランプ氏や中国の習近平(シーチンピン)国家主席、ロシアのプーチン大統領など世界の首脳が一堂に会し、首相が議長を務める。参院選の公示直前に存在感を示す格好の舞台と、首相は考えているに違いない。

 しかし、一連の外交が、どこまで内実を伴っているのか。日米の貿易交渉の行方は楽観できず、日ロの領土交渉は行き詰まっている。2島返還に軸足を移した日ロ交渉にしろ、前提条件なしの首脳会談をめざすことにした日朝関係にしろ、丁寧な説明のないままの重大な方針転換は、論戦にふたをする政権の姿勢につながっている。

 ■議論しないのは誰か

 国会後半、政権の幹部から、衆参同日選の可能性を示唆する発言が相次いだ。首相自ら「解散風」をあおるような場面もあった。選挙準備の整わない野党を浮足だたせ、国会での追及の矛先を鈍らせようという狙いもあったのではないか。

 首相は国会閉会を受けたきのうの記者会見で、衆参の憲法審査会の議論が過去1年ほとんど進んでいなかったとして、参院選の主要な争点のひとつは「憲法の議論すらしない政党を選ぶのか、議論を進めていく政党を選ぶのか」だと訴えた。

 しかし、今年の憲法記念日に際し本紙が実施した世論調査では、参院選で重視する政策で最も多かったのは「景気・雇用」、次いで「社会保障・福祉」。「憲法」は10の選択肢のうち9番目だった。

 国民の多くが関心を寄せる政策課題をめぐる議論に背を向けておきながら、憲法だけを取り上げて、野党の姿勢を批判するのはご都合主義の極みだ。

 6年6カ月に及ぶ長期政権の下、行政府と立法府の緊張関係は失われ、政権にはおごりと緩みがはびこる。健全な政治の機能をとりもどせるか、それが参院選で問われることになる。

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