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 国がかつてハンセン病患者を強制隔離した政策では、元患者本人だけでなく、その家族も被害者だ。いまも差別や偏見に直面する家族を放置し続けるわけにはいかない。

 元患者の子やきょうだいら561人が国に損害賠償などを求めた訴訟で、熊本地裁は大筋で原告の主張を認める判決を言い渡した。「憲法が保障する、社会で平穏に生活する権利や結婚生活の自由を侵害した」との判断はもっともで、誤った政策がもたらした「罪」の重さを改めて痛感する。

 目を引くのは、家族に対する差別や偏見を除去する措置を講じなかった政府の責任を、厳しく指摘したことだ。とるべきだった施策に具体的に言及するなど、異例の内容になっている。

 隔離を定めた「らい予防法」の廃止が遅れた国会の責任や時効の成否をめぐる判断など、判例や法理論に照らして踏み込んだ部分も多く、議論を呼ぶのは必至だ。

 一方で、政府と国会は、この判決を家族の被害と向き合うきっかけにしなければならない。

 ハンセン病はらい菌による弱い感染症だ。1900年代初めに隔離政策を始めた政府は、特効薬が開発されるなどしたあとも方針を変えず、予防法を廃止する96年まで隔離を続けた。

 元患者については01年、隔離を違憲として賠償を命じた熊本地裁判決が確定。政府と国会は謝罪し、法律を作って補償金を支払うなど様々な対策を展開してきたが、家族への施策はとらなかった。

 しかし、家族も被害を受けてきたことは厳然たる事実だ。

 一家の暮らしが壊され、とりわけ親を奪われた子どもは大きな影響を受けた。家族に患者がいることが知られて学校や職場、地域での居場所を失い、就職や結婚を拒まれた例も相次いだ。患者を隠し、縁を切るまでに追い込まれた人が多くいる。

 人生の様々な場面で自己実現の機会を奪われたことは「人生被害」と呼ばれる。差別が今もなくなっていないことは、今回の裁判で原告の大半が匿名だったことに端的に表れている。

 09年に施行されたハンセン病問題基本法は、患者本人への補償金の支給を踏まえ、さらに対策を講じるよう国に義務づけた。原告と弁護団は、基本法を改正して家族も被害者だと明記するよう主張している。

 法廷に立つことをためらう家族を励まし、後押ししたのは、高齢になった元患者本人だった。家族への支援は元患者の癒やしにつながる。そうした視点も踏まえ、教育の場や地域社会で偏見と差別をなくす取り組みを強めていかねばならない。

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