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 香港の情勢が混迷している。市民の街頭活動と当局とのぶつかり合いが、次第に暴力性を帯びてきた。

 数百人規模のデモ隊は今週、立法会(議会)の庁舎に突入し、占拠した。これを治安当局が強制的に排除した。

 庁舎のガラスが割られるなどし、当局の鎮圧行動がエスカレートしつつある。治安部隊はゴム弾や催涙弾などの使用を広げており、負傷者も出ている。

 衝突がさらに激化し、不測の事態に陥らないか、憂慮せざるをえない。市民のデモに対し、当局は武力行使や流血を招く行為に及んではならない。

 直接問題になっているのは、犯罪容疑者を中国に引き渡せるようにする「逃亡犯条例」の改正案である。強い反対を受けて香港政府は審議を延期し、廃案になることも認めた。

 それでも若者らは抗議を続けている。これまでは平和的な運動だったが、今回は破壊行為も生じた。香港の急激な中国化への危機感が、一部を強硬な行動に走らせているようだ。

 若者らは改正案の完全撤廃や行政長官の辞任、長官の選出方法の民主化などの要求を示している。香港政府はこれらに対話で応じるべきだ。

 条例改正案については、廃案まで認めた以上、撤回できない理由を見いだしがたい。

 これまでに香港政府と中国が譲歩したのは、先月の大阪でのG20サミットが影響したとの見方が強い。会合で習近平(シーチンピン)国家主席への批判を避けたかったとされ、若者らにとっては、自由をめぐる重大な懸案が指導者のメンツの問題に矮小(わいしょう)化されたとの不満がある。

 民主的な選挙制度がない香港で、人々の意思の表明はデモなどの方法に限られる。今回の条例問題を通じて、こうした香港の統治システムの限界や、人々の不満が浮き彫りになった。

 1997年に香港が英国から返還された際、中国は「一国二制度」を宣言した。50年間にわたり「高度の自治」を堅持すると内外に約束した。

 香港のトップである行政長官について、現在は市民の投票だけで選ぶ制度ではない。しかし香港特区基本法の付則には、より民主的な選挙にする可能性を明記した項目もある。

 中国は香港の自由を侵すのではなく、自治を強める改革にこそ動くべきである。民意を十分に取り入れることのできる統治システムづくりが必要だ。

 香港の活力と経済は中国にとっても重要であり、その安定を図るには、地元に根付いている自由と自立を認めなくてはならない。それが、中国が果たすべき約束履行の責務である。

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