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 自分たちが置かれた立場と、社会に対する責任をどう考えているのだろう。

 あす名古屋場所の初日を迎える日本相撲協会のことだ。「満員御礼」が続き、この1年間で4人の初優勝力士が生まれるなど次代への期待が高まる動きがある一方で、人々に約束した宿題は放り出されたままだ。

 「女性と土俵」をめぐる議論である。

 きっかけは昨年4月の巡業だった。くも膜下出血のため土俵上で倒れた来賓を助けようとした女性看護師に、土俵から降りるよう求める場内放送が流れ、非常識ぶりが世間を驚かせた。次の巡業地でも地元の女性市長が土俵上であいさつするのを認めず、批判が広がった。

 事態を受けて協会の八角理事長は、アナウンス内容を謝罪したうえで、女人禁制問題について「意識調査を行い、外部の意見を聞くなどして検討したい」という談話を発表した。

 それから1年以上が過ぎた。時間は十分あったのに、協会の動きは一向に伝わってこない。今年5月にようやく第1回の調査委員会を開いたというが、その事実は広報されず、どんなメンバーで構成されているのかすら明らかにしない。取材に、座長は協会ナンバー2の尾車事業部長だと答えた程度だ。

 動きの鈍さと、相変わらずの閉鎖的な体質にはあきれるばかりだ。この問題に本気で取り組み、多くの人が納得できる姿を探る意欲を持っているのか、疑わざるを得ない。

 意識調査は04~07年に実施されたことがある。先の理事長談話は、「表彰時にだけ女性が土俵に上がること」についても反対が5割以上だったと紹介している。だが実際は拮抗(きっこう)というべきで、賛否が同数だった年もある。しかも調査対象は相撲観戦に来た人だ。昨年5月の朝日新聞の全国世論調査では、容認派が65%を占めた。

 忘れてならないのは、協会は税制面などで優遇措置を受ける公益法人だということだ。コアなファン層にとどまらず、社会の幅広い理解と支持があって初めて認められる存在だ。今後の調査方法の決定や分析、議論にも、常にその自覚をもって臨まなければならない。

 女人禁制の理由として協会は「伝統」を挙げる。だが、テレビ中継の邪魔にならないよう、土俵の屋根を支える4本柱を取り払う▽以前は行われなかった同門力士同士の対戦を認める▽外国出身の力士を受け入れるなど、時代に応じて伝統を見直してきたのも大相撲の歴史だ。

 人気にあぐらをかき、改革を先送りする姿勢を続けるようでは、いずれ困ったことになる。

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