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 活発な梅雨前線の影響で先月末以降、九州南部で激しい雨が降った。200人をはるかに上回る死者・行方不明者が出た西日本豪雨からちょうど1年。「想定を超す雨」はもはや「想定の範囲内」になったと覚悟して、備えを固める必要がある。

 鹿児島、宮崎両県で河川の氾濫(はんらん)や土砂崩れがおき、2人が亡くなった。長雨で地盤がゆるんでいるところが多い。関係機関は今後も警戒を続け、迅速な情報発信に努めてほしい。

 昨年の豪雨では防災・気象情報が避難行動に十分むすびつかず、犠牲者が広がった。その教訓をもとに始まったのが、情報を5段階の数字であらわす「警戒レベル」の発表だ。

 両県内では全員に避難を促す「レベル4」の避難勧告や避難指示が出た。新聞・テレビなどを通じて「4は避難」がそれなりに浸透したのは良かったが、課題も浮かびあがった。

 例えば、市内全域の59万人に避難指示が出された鹿児島市では、どこへ逃げればいいのか、渋滞で身動きできなくなるといった戸惑いが多く聞かれた。

 避難、すなわち行政が用意した避難所に行くこと、という思い込みがあったのではないか。自宅より安全な親類・知人宅に身を寄せたり、自宅の中で水のこない高い階に移動したりすることも「避難」にあたる。

 そうした認識をどれだけの人が持っていたか。自治体などの情報は人々にどう伝わり、いかなる行動につながったか。状況が落ち着いた段階で調査し、是正すべき点があれば是正する。そんな対応が求められる。

 市が空振りを恐れずに、緊急性を伝えた姿勢は評価されて良い。他の自治体も萎縮する必要はない。ただし今後は、土砂災害警戒区域や川の流域など、地域を分けて発令することも検討されるべきではないか。経験を重ねながら、より適切な注意喚起のあり方を探りたい。

 九州各地では2年前の北部豪雨を思い起こした人や、93年に鹿児島市と周辺で約50人の犠牲者が出た「8・6水害」の記憶がよみがえって避難したと話す人も少なくなかった。その土地土地で以前どんな災害があったかを知ることが、防災上いかに有効かを示したといえる。

 大切なのは、過去を知り、そして将来起こりうる状況を想定することだ。参考になるのは、内閣府が普及を呼びかけている「災害・避難カード」だ。

 実際に町を歩き、豪雨時の危険箇所や避難所への経路、所要時間などを書いておく。最後に頼るのは自分の判断しかない、と意識する意味でも有効だ。準備を積むことが、いざという時の的確な行動につながる。

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