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 社会全体がもっと知識と関心を持ち、サポートする必要がある。そう痛感させられる。

 愛知県豊田市で、三つ子の母親が生後11カ月の第3子を床にたたきつけて死なせてしまう事件があった。経緯を検証した市が、先ごろ報告書をまとめた。

 それによると、市は妊娠届が出された時点で多胎であることを把握していた。だが支援の必要性を認識せず、危機の兆候がいくつもあったのに、介入の機会を逃し続けたという。

 たとえばこんな具合だ。

 問診票の「子どもの口をふさいだことがある」に女性が印をつけていたのに、助けを求めるサインと気づかなかった。健診の際、第1子の背中にあざを認めたが、対応を先送りした。育児休業をとっていた夫が職場復帰し、母親一人になることがわかっていたが、こども園への入園に便宜を図るなど特段の対応をしなかった――。

 いずれかの段階でもう一歩踏み込んで、夫婦の悩みや苦しみを聞き出し、負担を軽くする手立てをとっていたら、悲劇は避けられたのではないか。救えた命、一家の将来を考えると、無念と言うほかない。

 市側も無策だったわけではない。保健師は預かり保育のサービス利用を勧めた。だが母親は1日24回以上の授乳に追われ、眠れぬ日が続いていた。3児を連れて利用のための面談に出かける余裕はなかったという。

 ことし3月、裁判員裁判で母親に懲役3年6カ月の実刑判決が言い渡されると、多胎児の母親たちが中心になって、4万を超す減刑嘆願の署名を集めた。身につまされる、ひとごとではない、との思いからだ。

 核家族化や地域の人間関係の希薄化などから、育児の負担は重くなっている。多胎児はなおさらだ。出産までに母体にかかる負荷も大きい。子は低体重で生まれやすく、ふつうの子以上に手がかかり、出費もかさむ。

 おととし生まれた約94万6千人のうち、約2%の1万9千人が多胎児だった。不妊治療の普及などが影響してか、昔に比べて率は高くなっている。

 今回の事件をうけて、豊田市は職員研修の強化や保健師訪問のルール化などを始めた。

 先行するユニークな施策もある。東京都荒川区はタクシーや一時保育の利用料を補助し、大津市は外出などを手伝うヘルパー制度を設けている。岐阜県のNPOは、多胎児を育てた経験者を産院や家庭に派遣する。

 この問題は国会でも取り上げられ、根本匠厚労相は「取り組みを進める」と答えた。教訓を共有し、自治体への財政支援を進めるなど、育児を社会で支える仕組みを整えていきたい。

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