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 今回取り上げるのは天皇の代替わりをめぐる報道です。朝日新聞では3月から5月にかけて、「平成とは」「平成と天皇」「令和に寄せて」「1条 憲法を考える」などの特集を組み、オピニオン面で識者の意見を掲載して、多角的に改元を報じました。

 読者の関心も高く、私が目を通した中では、肯定的評価がおよそ半数、「騒ぎすぎ、あるいは物足りない」が約4割、そのほかが約1割。女性・女系天皇、天皇の人権、天皇の政治利用、昭和天皇の戦争責任、天皇制の是非、天皇の権威への警戒感などについて意見が寄せられました。

 今回の天皇代替わりについてどのように報道してきたのか、東京本社編集局長補佐として報道を統括した梅原季哉・現論説委員と現担当の杉林浩典・東京本社編集局長補佐、取材班の中心となっていた島康彦・東京社会部次長に聞きました。

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 小島 梅原さんは、明仁天皇(上皇さま)が退位の思いをにじませた2016年の「おことば」を聞いて、報道のポイントは何だと考えましたか。

 梅原 現憲法の第1条で、日本国の象徴であり、国民統合の象徴と定められている人が初めて、存命のうちに交代するということです。天皇制のあり方がかなり変わるのではないかと思いました。

 小島 平成の振り返りの要点は。

 梅原 2度の大震災や、各地で地震、豪雨災害があり、グローバル化と少子高齢化が進んだ30年でした。また明仁天皇が象徴天皇制を完成させた時代だと。

 小島 一番苦労した点は。

 梅原 天皇制について幅広い意見を載せようとするとどうしても分量が多くなり、「皇室・元号ばかり報じている」という批判を免れないことです。

 小島 メディアが騒ぎすぎという批判もありましたが。

 梅原 多くの人が関心を寄せた代替わりの本質を丁寧に伝え、過度な奉祝ムードには迎合せず、客観性を保つよう心がけました。

 小島 読者からは、天皇の政治利用についてもっと目を光らせるべきだという意見がありました。

 梅原 それはファクト(事実)で書いてきたと思います。新元号の決定過程の取材を通じて、政権が自らの思惑を介在させようとする動きがファクトとして確認できたので、読者に伝えなければと思いました。読者が是非を判断する材料を提供したいという思いはありました。

 小島 今後の皇室の課題は。

 梅原 皇位の安定的継承ですね。女性・女系天皇の議論を含めて。

 小島 杉林さん、島さんに聞きます。令和の皇室報道は何を主眼にしますか。

 杉林 象徴とは何かという問題、女性・女系天皇の議論、そして天皇の退位の自由が無いことなどに象徴される皇室の人権ですね。

 小島 新天皇、皇后両陛下はかなりの人気ですが。

 島 記者も驚いています。ただ、天皇、皇后という立場に付随した人気のようでもあり、人々は新天皇がどんな思いや考えを巡らせているかまでは関心がないように見えます。天皇の人権問題についても繰り返し伝えないと理解は深まらない。天皇制を考える上で根本の部分です。

 小島 冷静な報道が必要では。

 島 目新しい動きだけを追うのではなく、データを交えて、皇室が地道に継続的にやってきたことを報じることです。「なぜ人気があるか」を読み解かなくてはいけない。

 小島 秋には大嘗祭(だいじょうさい)がありますね。

 島 政治が利用しようとする動きを危惧しています。あとは政教分離ですね。秋篠宮さまの提言もありましたが、結局今回は議論もなく、前例を踏襲してしまったので。

 小島 皇室の人々は、国民の考えを知りたがっているのですか。

 島 そうだと思います。国民がどんな皇室の姿を望んでいるかを気にしているようです。

 小島 そうなのですね。国民と皇室との間接的な対話の場を作りつつ、客観的な報道をするには。

 島 ただ単に、天皇がどこを訪問したというような記事だけではなく、取材を通じてファクトを積み上げ、皇室の方々の考えや思いをきちんと受け止める。ご本人たちのことを知ることが客観的な報道につながると思っています。

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 ――取材班に話を聞いて、国民統合の象徴である天皇の人権をどう考えるのか、持続可能な天皇制とはどんな形か、象徴天皇制の存続の是非も含めて議論するべき時が来ていると感じました。多くの読者から、皇室の未来を心配する声が寄せられています。人気が高まっている中で、天皇の政治利用も気がかりです。天皇や皇族の人柄に対する評価と、象徴天皇制という制度についての議論を混同しないよう、冷静に報道することが重要です。

 ◆こじま・けいこ エッセイスト、東京大学大学院情報学環客員研究員、元TBSアナウンサー。1972年生まれ。

 ◆パブリックエディター:読者から寄せられる声をもとに、本社編集部門に意見や要望を伝える

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