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 現実を直視して議論しなければならない。

 原発政策のことだ。

 参院選の公約で、与党の自民、公明は政府のエネルギー基本計画に沿って、原発の再稼働を進める方針を掲げている。

 基本計画では原発を基幹電源とし、2030年度に電力の20~22%をまかなうと想定する。

 東京電力福島第一原発の事故後、全国の原発のうち21基の廃炉が決定・検討されている。計画実現には30基程度の稼働が必要で、残るほぼすべての原発を動かさねばならない。現実的と言えるだろうか。

 電力業界は再稼働を最優先課題とするが、これまでに動いたのは9基。地元の反対や活断層の存在などから、メドが立たない原発も目立つ。

 新潟県の柏崎刈羽原発の運転再開を目ざす東電は、6月の株主総会で「やっぱり原発稼働がいるんです」と訴えた。原発を動かして利益を伸ばし、「福島への責任を果たす」という。

 だが、東電はその新潟で、事故時の対策拠点になる免震重要棟の耐震性不足を、3年間にわたって自治体に十分説明せず、陳謝したことがある。6月の地震の際には、「異常」が起きたと誤情報を送信するミスを犯した。とても地元の理解を深められる状況ではない。

 再稼働した原発も、テロ対策施設の建設が遅れ、九州電力や関西電力で来春から順次、再停止に追い込まれそうだ。

 「コスト安」も揺らいでいる。福島の事故で安全対策費が増え、再稼働に向けて投じられた費用は計4兆円を超す。

 「国内がだめなら海外で」と官民で取り組んだ原発輸出も、各国で行き詰まっている。

 与党は原発依存の姿勢を変えないのであれば、現実とのズレをどう解消するのか、具体的に説明するべきだ。

 高レベル放射性廃棄物の最終処分場づくりも展望はない。使用済み燃料からプルトニウムを取り出して使う「核燃料サイクル」も事実上破綻(はたん)した。それなのに、プルトニウムを取り出す青森県六ケ所村の再処理工場を稼働させるのか。政策の矛盾は幾重にも重なっている。

 再稼働を認めず「原発ゼロ」を掲げる立憲民主や共産などの野党も、実現性を問われる。太陽光などの再生可能エネルギーへの移行を目ざすにしても、再エネ事業者らに一定収入を保障するための国民負担は抑えねばならない。再エネ主体で安定的に電力を供給する方策の確立も必要だ。原発に頼ってきた地域の経済への配慮も欠かせない。

 原発立地地域はもとより、電力消費地でも、原発の今後についてしっかり考えたい。

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