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 お金の役割が、ほかのものに取って代わられることがある。体制末期の旧ソ連の場合は、米国産のたばこだった。物資が不足して、急激なインフレが起こり、通貨ルーブルの信用が失われていた▼1990年の記事を読むと、タクシー運転手が外国人に「マールボロ2箱くれるなら、乗せてやる」と持ちかける様子が出てくる。さて話は、インターネット上でやり取りされる仮想通貨である。旧ソ連のたばこ、あるいはそれ以上の存在になるかも、との指摘が出ている▼仮想通貨はビットコインが先行したが、価格が不安定で、とても通貨とは言えない。最近になって米フェイスブックが「リブラ」という独自の通貨をつくる計画を発表し、にわかに注目を浴びている。利用者が世界中にいて潜在力があるためだ▼国際通貨基金が15日に発表した報告書は、経済基盤の弱い国の人々が、仮想通貨の方が信用できると考え、自国通貨を投げ出す可能性があると指摘している。それの何が問題かというと、中央銀行が経済をコントロールできなくなるのだという▼ドル経済圏ならぬリブラ経済圏が途上国を横断して生まれる。そんな世界を想像してみる。国家がひどい経済運営をしても、仮想通貨が防波堤になり、暮らしを安定させるのか。それとも制御不能の通貨として、モンスターのようになってしまうのか▼中央銀行からの懸念を背景に、フェイスブックはリブラの発行を慎重に進める構えだ。世に出たとき、どんな姿になるのだろう。

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