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 アニメ制作に打ち込んできた人生が突然、断たれた。その無念さを思うとき、深い悲しみとともに放火という卑劣な行為への憤りがこみあげてくる。

 アニメ制作会社「京都アニメーション(京アニ)」の京都市伏見区のスタジオに火が放たれた事件は、現場で33人の死亡が確認された。負傷した人も30人を超え、懸命の治療が続いているが、重篤な状態の人もいる。

 警察が容疑者として氏名を公表した男は、スタジオで「死ね」などと叫びながらガソリンのような液体をまき、火をつけたとされる。現場から逃げ出し、近くの路上で身柄を確保された際には「小説を盗まれたから放火した」という趣旨の説明をしたという。

 スタジオの近くでは、ガソリンのような液体が残る携行缶と台車、包丁数本とハンマーが入ったかばんが見つかった。計画性や強い殺意がうかがわれるが、男と京アニ社との関係は確認されていない。同社には数年前から危害を予告するようなメールなどが届いていたというが、事件との関連は不明だ。

 なぜ京アニ社が狙われたのか。事件前、男はどう行動していたのか。警察はけがをして入院中の男の回復を待って事情聴取する方針だが、犯行動機の解明をはじめ、捜査を尽くしてほしい。

 スタジオは鉄筋コンクリート造り3階建てで、延べ700平方メートルの大半が焼けた。犠牲者の多くは一酸化炭素中毒が死因と見られ、ほとんどが2階より上で見つかった。1階の入り口付近で放火された後、爆発のように炎と煙が広がる「爆燃(ばくねん)現象」が起きたとする専門家もいる。

 建物には、らせん階段が1階から3階までを貫く形で設置されていた。京都市消防局はこの吹き抜けが炎や煙のまわりを早めた可能性があるとみている。建物に消防法や建築基準法上の問題点は確認されていなかったというが、建物の構造を防火の観点からチェックする作業が欠かせないだろう。

 アニメ制作会社の多くが首都圏に拠点を置くなかで、京アニ社は「地方発」にこだわり、描き込みの多い丁寧な作画は国内外のファンを魅了してきた。人気作を次々と手がけており、評価が高い日本のアニメ業界の中で、同社に集った人材は「日本の宝」とも評される。

 事件現場にはファンらが次々と訪れては花を手向け、海外からもSNSなどで哀悼と励ましのメッセージが相次いでいる。

 犯行の全容を明らかにし、悲劇を繰り返さないためにさまざまな視点から対策を尽くす。それが犠牲者への責任を果たす一歩となる。

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