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 受験生を預かる先生たちの切羽詰まった訴えである。文部科学省は責任の重さをかみしめ、対応を急がねばならない。

 今の高2生から新たに始まる大学入学共通テストに、英語の民間試験が導入されることをめぐり、全国高校長協会が「不安の解消」を申し入れた。

 大学入試センターが認定した6団体7種の民間試験のうち、どれを受けるかを高校生自らが決める。来年4~12月の間に何度か行われる試験のうち、最大2回まで受験でき、その結果が合否判定の材料となる。

 ところがその全体像がいまだ固まっていない。参加予定だったTOEICは今月になって撤退を表明した。受験生に大きな影響が及ぶ変更がある際は、2年前には予告するというのが、文科省自身が定めた原則だ。異常事態というほかない。

 校長たちの指摘は多岐にわたる。全員が望みどおりの時期や場所で試験を受けられる見通しが依然立っていない▽「お試し受験」が何度もできるなど、地域や経済格差への対応が足りない▽採点方式をはじめ、試験が公平・公正に行われるか、不信が拭えない▽民間試験の活用方法を公表していない大学がある▽障害のある受験生への対応が団体によって異なる――。

 問題を解消できないのなら実施を延期すべきだという声が、「相当数の」校長から上がったという。もっともな話だ。

 民間試験に関しては他にも、異なる試験を受けた者の成績を公平に比較できるか、試験場の環境を平等に整えられるかなど多くの疑問がある。朝日新聞の社説は「対応策を検討し、場合によっては導入の先送りも覚悟すべきだ」と主張してきた。

 「まったく先が見通せないほどの混乱状況」(校長協会)に至ったのは、国が受験生や保護者、高校・大学の心配を置き去りにして、改革ありきで拙速に事を進めたツケといえる。

 拍車をかけているのが、現場の不安に真摯(しんし)に応えようという姿勢の欠如だ。昨年末に文科省はこれらの課題を検討するための組織を設けたが、議論は非公開で、ホームページなどを通じての情報発信も一切ない。理解しがたい対応だ。

 進路指導が秋から本格化するため、協会は8月中の回答を求めている。文科省はすみやかに対策を講じて説明の場を設け、受験生や現場の動揺を収めるために全力を尽くす必要がある。

 共通テストに対しては、国語の記述式問題についても採点の公平性や質の担保に懸念が出ている。なし崩しに実施に踏み切れば、共通テスト、ひいては大学入試制度全体の信頼が損なわれる。そのことを恐れる。

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