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 今年度の最低賃金の引き上げの目安額が決まった。これにより全国の最低賃金の加重平均は時給901円、東京と神奈川では1千円を超える見通しだ。このペースで引き上げが続けば、4年後には政府目標の「全国平均1千円」もみえてくる。

 だが、比較的最低賃金が高く労働者人口の多い都市部が、全体の平均値を押し上げているに過ぎない。普通に働けば、誰もが暮らせるようにする。最低賃金引き上げの原点に立ち返れば、底上げのためのより踏み込んだ取り組みが必要だ。

 最低賃金は過去3年、「毎年3%程度」という安倍政権の方針に沿って引き上げが続いてきた。今年の「骨太の方針」では、「全国平均1千円」という目標のより早期の実現と、地域間格差への配慮も掲げられた。

 これに対し、中小企業の経営者団体が公然と反対し、引き上げ率は結局、例年とほぼ同じ約3%に落ち着いた。最低賃金が最も高い東京と最も低い鹿児島の差は、昨年度の224円から226円に広がり、政府主導の引き上げにも陰りが見える。

 労働側は昨年同様、時給800円未満の地域をなくすことを強く求めた。しかし今回の引き上げで解消されるのは宮城と香川の2県で、なお17県が700円台にとどまる見通しだ。

 地域間の格差を縮めなければ、地方からの働き手の流出に拍車がかかりかねない。最低賃金が低い地域の引き上げ額を都市部より上積みするなど、具体的な方策を考えるべきだ。

 参院選では一部の野党が、全国一律の最低賃金を公約に掲げた。都道府県を4ランクに分け、ランクごとに引き上げ幅を決める今のやり方で良いのかも、今後の検討課題だろう。

 日本の最低賃金の水準は英国、フランスなど先進諸国と比べて大きく見劣りすると言われて久しい。最低賃金に近い賃金で働く人の中には、非正規雇用で働かざるを得ない人や外国人労働者など、その収入で生計を立てている人も少なくないとされる。こうした人たちの暮らしを底上げしなければ、個人消費の回復も見込めない。

 もちろん、急激な引き上げに中小企業がついていけず、職を失う人が出ることがないよう、配慮は必要だ。中小企業の生産性を高めるための支援や、大企業と下請けの取引条件の改善などを進めねばならない。

 一方で、この間の最低賃金引き上げで、雇用への大きな影響は出ていないとみられる。客観的なデータに基づき公開の場で議論するなど、審議のあり方を見直すことも、最低賃金引き上げへの理解を広げる一助になるのではないか。

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