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 直近まで重大な問題だと認識していなかった――。そんな説明に汲々(きゅうきゅう)とする経営陣に、会社立て直しの陣頭指揮がとれるのだろうか。

 日本郵政グループは、傘下のかんぽ生命が過去5年に販売した保険のうち18万3千件に、顧客に不利益を与えた疑いがあると発表した。詳しく調査し、不利益を解消するという。約3千万ある契約すべてについても、顧客に案内状を送り、不利益がなかったか確認する。

 記者会見した長門正貢(まさつぐ)・日本郵政社長は、顧客にわびるとともに、原因究明と再発防止を図る意向を表明した。一方で、自身やかんぽ生命、販売を委託されていた日本郵便のトップの経営責任については、「職責をしっかりと果たす」「課題の実行実現のため、陣頭指揮をとって邁進(まいしん)する」などとして、早期の辞任を否定した。

 不適切な販売の背景には、営業現場に課せられた過大な新規契約獲得のノルマがあったと見られる。郵便局ブランドの信頼感を背景に、高齢者らに不合理な契約を迫り、保険料が二重払いになるような例が多発した。

 顧客の苦情を受け、日本郵便とかんぽ生命は17年1月、保険販売の品質改善のため、両社長をトップとする対策本部を設け、同年12月には総合対策を実施した。だが、現場では顧客の利益を考えない販売が続いた。経営の失敗というしかない。

 にもかかわらず、会見での経営陣の説明は、危機感の乏しさが目立った。

 日本郵政は4月4日にかんぽ生命の株式の一部を売り出すと発表した。その時に問題の重大さを認識していたのかどうか。長門社長は「持ち株会社の立場でいえば、4月4日時点は全くシロ」と述べ、そうした疑問に強く反論した。投資家をだましたわけではない、との主張だ。

 仮にそうだとすれば、事態を把握する能力が経営陣になかったと認めていることになる。かんぽ生命は今年1~2月の調査で、昨年11月の1カ月間だけで顧客に不利益を与えた疑いのある販売が5800件あったことをつかんでいた。それでも問題の深刻さに気づかなかった経営陣に、信頼回復が果たせるとは考えにくい。

 問題発覚後、かんぽ生命と日本郵政の株価は下落している。政府は保有する日本郵政株の一部を年内にも売り、東日本大震災の復興財源にあてる計画だったが、影響は必至だ。国民共有の財産の価値も傷つけたと言わざるをえない。

 金融庁は厳正な検査と処分をする必要がある。日本郵政グループのあり方について、郵政民営化委員会でも検証すべきだ。

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