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 冷戦期の核大国が歩み寄った合意が、白紙に戻ってしまった。歴史の逆行に歯止めをかけるには、非核国を中心に国際世論を高めねばなるまい。

 米国と旧ソ連が1987年に結んだ中距離核戦力全廃条約がきのう、失効した。INFと呼ばれる特定の核兵器を廃棄し、冷戦終結の呼び水ともなった画期的な条約だった。

 昨年に一方的に離脱を表明したトランプ米政権は、通常弾頭を載せた新型の中距離弾道ミサイルの開発に動いている。ロシアも核戦力の強化の意向を示している。

 軍拡競争に勝者はいない。トランプ氏の「力による平和」は時代錯誤の考え方だ。米ロは核軍縮・軍備管理の復活へ向け、交渉を立て直すべきである。

 米国は条約離脱の理由としてロシアの違反行為を挙げたが、中国の存在もあった。米ロの条約は、枠外にいる中国を利するだけだ、との不満がある。

 2021年に期限切れとなる戦略核兵器の削減条約「新START」についても、米国はロシアとの条約延長に消極的だ。中国を加えなければ、実効性がないと主張している。

 確かに、中国など他の核保有国を包含する多国間の軍縮枠組みは長期的に必要だ。だが、中国は、核弾頭数が米ロより桁違いに少ないことなどを理由に、軍縮に応じようとしない。

 中国の言い分は身勝手ではあるが、米ロが世界の核兵器の9割を保有しているのも事実だ。まず米ロ自らが核削減に動かなければ、説得力を持てない。

 INF条約の失効は、日本にも影響する。中ロに対抗して米国が開発する新型ミサイルの配備先候補として、在日米軍基地までが取りざたされるのは大きな懸念である。

 核大国が無責任な軍拡に走るいま、改めて「核なき世界」をめざす国際世論を強める必要がある。折しも来年は核不拡散条約が50周年を迎え、国際社会の取り組みが問われる時だ。

 不拡散条約に定められた核軍縮の義務を果たさなければ、北朝鮮やイランの核開発をとがめる資格もない。大国が核のルールを壊し、世界を危うくする愚かさを、非核国が結束して思い起こさせなくてはならない。

 本来その先頭に立つべきなのが、戦争被爆国・日本である。河野外相は先日、INF条約失効後、国連の安保理常任理事国5カ国が新たな軍縮の枠組みづくりに動くよう呼びかけた。

 中国はすぐ拒否したが、引き下がらず主張すべきだ。そして何より、最も緊密な核保有国・米国への説得に動かねば、保有国と非保有国との「橋渡し」役を自任することはできない。

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