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 若者の自殺が深刻さを増している。先月公表された自殺対策白書によると、昨年は10代の自殺者が前年より32人増えて599人で、10万人あたりの自殺死亡率はこの40年間で最悪だった。他の年代が数・率とも減るなかで見過ごせない事態だ。

 成人の状況が一定程度改善したのは、景気の動向に加え、自治体などが失業や心の病といった自殺の原因となる事情を把握し、部署間の連携を強化してきた成果だ。若者についても対応を急ぐ必要がある。

 白書によると、原因・動機別では「学校問題」が188人と最多で、なかでも「学業不振」「進路の悩み」が上位に並ぶ。

 少子化で受験のプレッシャーは和らいでいるはずなのに、と思う人もいるだろう。だが実際は、政府が「脱ゆとり教育」に転換して以降、現場に学力向上を求める圧力は、この10年ほど大きくなっている。

 それだけではない。教室にはコミュニケーション能力や運動能力など、生徒に「序列」をつける要因が満ちている。

 学校が常に他人と比べられる息苦しい場所になっているのではないか。自殺防止の専門家らはそんな懸念を漏らす。

 文部科学省の指針は、子どもが自殺したときは、全件について原因などを調べるよう定めている。とりわけ体罰や勉強、友人関係など学校生活との関連が疑われるものは、詳しく調査のうえ、都道府県レベルなどでの検証を求めている。

 そうした作業を積み重ね、教訓を洗い出し、再発防止に生かさなければならない。

 授業が理解できない子どもを置き去りにしない教え方を工夫する。相談しやすい雰囲気を作り、自己否定に走らないようサポートする。校長ら管理職や事務職員とも協力して臨む。そんな取り組みが求められる。

 白書では「いじめ」が原因の自殺は2件と少なかったが、これは遺書などの明白な裏付けがあるものだけを数えたためだ。もっと多いとする統計もある。

 日本財団の調査では、いじめ被害を受けた人はそうでない人よりも、死を考える危険度が4倍高いという。心を傷つける残酷な行為だという認識をもち、自殺防止の観点からも、対策に注力する必要がある。

 学校が重荷になっている子のために、よりどころになる校外の場所や機会を充実させるとともに、無理に登校せずフリースクールを活用する選択肢もあることを積極的に伝えたい。

 2学期が近づくと、学校の再開を恐れ、追いつめられる子も少なくない。各校と教育委員会は相談窓口の周知に努め、苦しみに手を差し伸べてほしい。

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