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 貿易をめぐる米中の対立が激しさを増し、舞台は通貨にも広がった。圧力と報復の歯止めなき連鎖は、両国を含めた世界経済を危機にさらしかねない。解決の糸口を探るため、両国は冷静に対話の席につくべきだ。

 米国のトランプ大統領は1日、中国からの輸入品ほぼすべてに対象を広げる制裁関税「第4弾」を、9月に発動すると表明した。中国側はこの措置が首脳同士の合意に「著しく反している」と反発を強め、中国商務省は中国企業が米農産品の購入を一時停止したと発表した。

 並行して為替市場では人民元安が進み、節目とされてきた1ドル=7元を割り込んで11年ぶりの安値をつけた。トランプ氏は中国による「為替操作だ」と批判し、米財務省も中国を「為替操作国」に認定した。

 一連の応酬を受けて、各国の金融市場は不安定化し、株安や円高が進んだ。世界1、2位の規模を誇る両国経済は生産、消費の両面で、日本を含むアジア各国や欧州などと深く結びついている。対立がエスカレートし市場を揺らし続ければ、世界に変調が及ぶ。日本経済にとっても事態は深刻だ。

 為替操作国の認定にあたり、米国側は、中国が元安で輸出競争力を高めようとしていると批判した。これに対して中国側は、貿易摩擦を含む市場環境が元安の要因だとし、為替操作を否定している。

 人民元相場は中国当局が毎朝設定する基準値の上下一定幅以内で動く仕組みで、円やドルのような完全な変動相場ではない。透明性を欠くのは事実であり、中国当局の真意も読みにくい。だが、元安は中国にとっても資本流出などのリスクをはらんでおり、米側の評価は一面的に見える。

 そもそも為替操作国の認定について米国は、当該国の対米貿易黒字、経常収支黒字、為替介入実績の3項目で、一定の基準を設けている。今年5月の報告書では、中国は1項目しか該当していないとされていた。ここに来て、なぜ認定に至ったのか、十分な説明はない。

 米国は今後の具体的措置についても触れておらず、操作国認定にどのような効力があるのか現時点では不明だ。だが、両国の不信の溝が深まる中で、より強圧的な姿勢で譲歩を迫れば、さらなる報復の連鎖を招くおそれがある。関税も為替も、経済的争いの「武器」として都合よく使うことは慎むべきだ。

 まずは米国が第4弾の発動を撤回し、中国も対抗措置を取り下げねばならない。予定されている9月の米中の高官級会合を確実に開き、粘り強く協議を続ける必要がある。

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