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 人の行動が様々な形でデータ化され、利用される。ところが当人はそれを知らず、無防備な状態に置かれ続ける。そんな現実を端的に示す出来事だ。

 就活情報サイト「リクナビ」の運営会社が、学生の閲覧履歴などを人工知能(AI)を使って分析し、企業の採用内定を辞退する確率を予測して販売していた。価格は400万~500万円で、38社が購入した。

 リクナビ側は、登録時に利用規約を示し、本人の同意を得たと説明する。しかし、そこには「採用活動補助のために利用企業に情報提供することがある」と書いてあるだけだ。具体的な使途を学生は知り得ない。

 同社はまた、予測結果を売った相手は、合否判定には使わないと約束した企業だけだともいう。だが外部からは確認のしようがなく、学生らが不信を抱くのは当然だ。対象となった学生の数も公表しておらず、不誠実とのそしりは免れまい。

 さらに、明らかに同意手続きをとっていなかった例も多数発覚し、同社は販売の中止を決めた。社内のチェック体制も含め、問題の所在を速やかに検証して公表する責任がある。

 予測結果を購入した企業側の姿勢も問われる。過去の内定辞退者の情報をリクナビ側に渡し、それがAIによる分析の土台になっていた。学生の同意は得ていたのだろうか。

 個人情報保護法は、情報を取り扱う事業者に対し、利用目的を特定するよう求める。だが、何をどこまで明示すればよいかは定めがなく、多くの企業が、あいまいな表現の規約で情報を集めているのが現状だ。

 行動履歴などを分析し、人の性向を割り出すことを「プロファイリング」と呼ぶ。そこで描かれた人物像が就職や融資の採否を決める際に使われ、本人が関知しないまま、不利な扱いを受ける材料になりかねない。そんな懸念が浮上している。

 同法は来年の見直しが予定されるが、こうした問題にどう対処すべきか、検討が十分進んでいるとは言いがたい。

 一方で、公正取引委員会は巨大IT企業を念頭に、強い立場の事業者がサービスと引き換えに、不当に個人情報を収集することを規制する方向で動いている。独占禁止法の「優越的地位の乱用」に当たるとの考えだ。今や就職活動のインフラと言える情報サイトと学生の関係も、これに該当するだろう。

 データ社会に生きる個人をどう守るか、多様な角度から議論を加速させる必要がある。あわせて企業には、法制度が整う前でも倫理・良識に基づく行動が求められる。さもなければ人々の信頼を失うことになる。

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