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 政府が2025年度に達成をめざす財政健全化の目標は、実現のめどが全く立たない。それでも具体的な道筋を示さぬまま、健全化の旗は掲げ続ける。

 あまりに無責任ではないか。安倍首相の説明責任が問われている。

 目標とする基礎的財政収支(PB)の黒字化が実現できれば、医療や介護、教育や災害対策などさまざまな政策に必要な経費を、借金に頼らずにその年度の税収などでまかなえることになる。借金の膨張にも、一定の歯止めがかかる。

 内閣府が7月末に発表した28年度までの試算によると、名目の経済成長率が第2次安倍政権になってからの平均に近い1%台半ばが続く前提では、赤字から抜け出せない。25年度に目標を達成するには、国と地方を合わせて7・2兆円分の歳出を減らすか、税収を増やす必要がある。防衛費や公共事業費を上回り、消費税率では2・5%に相当する金額だ。

 名目で3%程度を上回る高い成長が続くとしても、25年度は2・3兆円の赤字だ。黒字になるのは、今年1月の試算より1年遅い27年度と見込む。

 安倍首相は参院選の後、「25年度のPB黒字化は見通しが立ちつつある」と語っていた。

 事実と異なる発言ではないか。「今後10年間くらいは消費税を上げる必要はないと思う」とも言うが、消費税率を10%にとどめたまま、どうやって黒字化を実現するのか。所得税や法人税など、ほかの税を増税するのか。税収が増えるよう成長率を底上げするため、新たな政策の用意があるのか。

 約60兆円になった税収を、首相は「バブル期を抜いて過去最高額」と誇る。しかし、バブル期の歳出は70兆円前後だった。その1・4倍の100兆円規模の歳出を続けていては、黒字化は難しい。高齢社会で社会保障費はこの先、さらにふくらむ。まだ手の届いていない政策にも目配りしつつ、どう整合性をとるのか。

 山積する国民の疑問に、首相はまったく答えていない。

 黒字化の目標時期は、もともと来年度だった。それを首相は昨年、5年先送りした。政権に必達目標との認識がなく、具体策を怠り、状況は悪化して、実現をなお見通せない。

 いまは日本銀行の金融緩和で金利が低く抑えられ、経済や暮らしに大きな影響は見えない。しかし金利がひとたび上がれば財政運営は行き詰まり、国民にしわ寄せがいきかねない。

 首相は「負担を次の世代へ先送りしない」と強調してきた。ならばまず、議論の先送りをやめるべきだ。

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