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 地球温暖化に伴う異常気象は食糧生産に悪影響を及ぼすが、農地を広げれば温暖化が加速してしまう。温暖化対策と食糧確保を両立するには、森林や農地のバランスを考えて土地を利用しないといけない――。

 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)がまとめた特別報告書である。

 IPCCは世界の科学者のネットワークで、温暖化の現状について総合分析した評価報告書を数年ごとに出している。今回の特別報告書は、気候変動と土地利用にテーマを絞り、日本を含む52カ国の専門家107人が分析したものだ。

 報告書によると、産業革命以降、陸地の気温は地球全体の2倍近いペースで上昇し、洪水や干ばつなどによる土地の劣化が起きている。トウモロコシや小麦の収穫量が減る地域も現れており、今世紀半ばには穀物価格が現在より最大23%も上がる恐れがあるという。

 世界の人口が増え続けていることを考えると、穀物の生産量の減少は見すごせない。食糧不足のせいで飢餓や貧困、紛争が広がらないよう、安定供給に努める必要がある。

 しかし、農地を無秩序に拡大すれば、温室効果ガスの排出を増やしてしまう。

 「人間の活動で出る温室効果ガスのうち、農業や林業などの土地利用によるものが23%にのぼる」。報告書は、そう指摘する。森林が伐採されると、本来なら樹木に吸収されるはずの二酸化炭素(CO2)が大気中に残ってしまうのだ。

 植林や森林の再生に努めつつ農作物を確保する、という二兎(にと)を追う工夫が欠かせない。

 温暖化対策と食糧生産が競合する場面は、ほかにもある。

 石油や石炭の代わりにバイオ燃料を広げていけば温暖化対策に効果がある。ただ、バイオ燃料の原料となる植物の栽培が広がると、食用の作物の生産にしわ寄せがいく。あげくに森林を切り開き、新たな農地を確保するようでは本末転倒だ。

 温暖化や食糧不足などの問題は、互いに複雑に絡み合っている。特定の問題だけを見て土地を利用していると、別の問題が深刻化してしまう。そのことを忘れてはならない。

 複数の問題を同時に解決するため知恵を絞りたい。

 たとえば、食べられるのに捨てられる「食品ロス」を減らしたり、肉から野菜に食生活の比重を移したりして食糧や飼料の生産を抑える。空いた土地を植林やバイオ燃料の生産に当て、CO2を減らす。報告書は、そんな道筋も示唆している。

 社会全体で問題意識を共有することが欠かせない。

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