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 国と地域の未来を考える冷静な思考を踏み外したというほかない。大統領はいま一度、熟考し、決定を覆すべきである。

 韓国政府が、日本と軍事情報を教えあうために交わした協定の破棄を決めた。GSOMIA(ジーソミア)と呼ばれる取り決めで、きのう日本側に伝えた。

 3年前に結んで以来、日韓は例えば、北朝鮮がミサイルを撃てば、それぞれが集めた情報をすぐ交換し、分析できた。

 今回、その協定の維持は「国益に合わない」と判断したという。だが現実には、破棄こそが国益を損ねるのは明らかだ。

 文在寅(ムンジェイン)大統領は北朝鮮との融和をめざしている。その平和的な努力は評価できるが、希望と現実を混同してはならない。南北間や米朝間の首脳対話が実現しても、北朝鮮の軍事的な脅威は何も変わっていないのだ。

 脅威に立ち向かううえで最も肝要なのは、米韓日の結束であり、3国政府はそのための調整を長年重ねてきた。今回の日韓協定もその財産の一つであり、両国の防衛当局がこれまで双方に有益だと認めてきた。

 文政権は、米軍が持つ有事の際の指揮権を韓国に早く移すよう求めるなど、かねて自主防衛を強調してきた。もし今回の決定に、協定の破棄を求める北朝鮮への配慮があったならば、日米と韓国との間に深刻な溝を生んだといわざるをえない。

 米政府は「失望」を表明している。だが、その米国も日韓に対して安保と貿易問題を絡める一方的な要求を繰り返してきた。今回の韓国の判断の背景には、米国自らが招いた威信の低下があるのも事実だろう。

 ロシアと中国は最近、日韓周辺に軍用機を飛ばし、共同で監視飛行する異例の挑発にでた。日韓の対立悪化と日米韓の連携のゆるみが、北東アジアの安保環境に影を落としつつある。

 こうした現状を顧みずに、強硬姿勢にひた走る外交は慎むべきだ。安倍政権は輸出規制強化の理由に安全保障面の問題を掲げたが、今回の文政権はそれを逆手に協定破棄に踏み切った。歴史問題から、経済、安保へと広がる対立の連鎖を断ち切らなくてはならない。

 文大統領は今月、植民地支配からの解放を祝う日の演説で、厳しい日本批判を控えた。だが報復合戦の根本にあるのは徴用工問題であり、この懸案を少しずつでも進展させなければ関係改善は望めない。

 日本が輸出規制で韓国に対する優遇措置を外すのは、今月28日。そして、日韓の情報協定が効力を失うのは11月23日。これらの日程もにらみつつ、両政府は徴用工問題への対応策を落ち着いて話しあうべきだ。

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