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 時代の要請に逆行し、そうでなくても疑問や異論が出ている五輪への不信を深める措置だ。撤回を求める。

 日本オリンピック委員会(JOC)が、来月から理事会を全面非公開とすることを決めた。6月に会長に就任した山下泰裕氏が提案した。

 理事会は、選手強化策を含む事業計画や予算を承認し、業務執行にあたる重要な機関で、会長以下約30人で構成される。

 JOCは89年の発足以来、人事など一部の案件を除いて審議をメディアに公開してきた。今回の方針転換の理由を、山下氏は「(公開では)話せないことが多く、議論が低調だった。表には出せない情報も共有して話し合いたい」と説明する。

 JOCには国などから多額の補助金が支給され、理事の多くは各競技団体の幹部だ。そうした公益性の高い組織と「公人」というべき理事らが、密室でなければ議論ができないという。そんな旧態依然とした意識で、人々の理解を得られると思っているのだろうか。

 スポーツ界には不祥事が相次ぐ。JOCも例外でない。竹田恒和前会長には、東京五輪招致をめぐる贈賄疑惑が浮上している。だがJOCはおざなりの調査をしただけで、説明責任を果たそうとしない竹田氏をいさめることもしなかった。結局、社会の信頼を失い、五輪直前の会長交代という異例の事態を招いた。かわって登場した山下氏の「改革」の初めが理事会の非公開とは、何をかいわんやだ。

 スポーツ基本法は「スポーツ団体は運営の透明性の確保を図るよう努める」と定めている。一連の問題を踏まえ、スポーツ団体が守るべき規範として今年6月に制定されたガバナンスコードにも、「適切な情報開示」が盛り込まれた。

 各競技団体を指導・統括する立場にあるJOCの今回の対応は、こうした流れに反し、傘下の団体に「法やコードに縛られる必要はない」という誤ったメッセージを送るのも同然だ。

 山下氏は就任記者会見で、JOCが成長し、スポーツが社会に不可欠な存在になることを目標に掲げた。その言葉を実行に移さなければならない。

 理事会の公開問題にとどまらない。JOCのホームページを見ても、過去の理事会の議事録や資料は掲載されていない。しかし例えば米国では、これらの情報をオープンにして、人々のチェックを受けられるようにするのが当たり前になっている。

 スポーツへの関心と理解を深めるのは、メダルの数の多寡だけではない。視線を広く外に向け、JOCを真にたくましい組織に脱皮させてもらいたい。

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