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 何とか日本の立場もくんだ妥協が成立したが、国際社会の潮流ははっきりしている。政府は状況を正しく認識し、施策の見直しを進めるべきだ。

 アフリカゾウの象牙取引をめぐる見解の対立である。

 密猟を防ぐには各国の市場を完全閉鎖し、取引できないようにする必要があるとするアフリカ9カ国の提案が、野生動植物の保護を話し合うワシントン条約締約国会議の議題になった。

 最終的には、国内市場をもつ国に重い説明責任を課し、密猟や違法取引の防止対策を報告させることで落ち着いた。政府は「日本の主張が理解された」というが、象牙取引に注がれる目は厳しさを増している。将来の市場閉鎖に向けて、第一歩を踏み出さなければならない。

 アフリカゾウの象牙は1990年以降、条約の下で輸出入が原則禁じられている。2016年の前回会議では、国境を超えた取引の禁止からさらに踏み込み、密猟や違法取引を助長する国内市場の閉鎖が勧告された。

 これを受けて、最大の市場だった中国が17年末で製造・取引を禁止した。シンガポールや香港なども象牙取引を禁じる方針を打ちだしており、市場閉鎖の流れが加速している。

 日本は、89年以前に輸入した分と、その後、南部アフリカの国々が特例輸出した際に受け入れた分について、国内取引を認めている。政府はかねて「市場は厳格に管理されている」と主張し、前回会議後には象牙を取り扱う業者を、届け出制から、より厳しい登録制にした。

 しかし他国の評価は異なる。今回の9カ国の提案は日本を名指ししたうえで、「規制に抜け穴があり、違法取引を助長している」と非難した。

 実際に、日本から中国への密輸の横行を指摘した国際NGOの調査がある。また、象牙製品を国外へ持ち出せるか販売業者に尋ねてみたら、本当は違法であるにもかかわらず、6割が「持ち出してかまわない」と答えたとの報告もある。市場の信用にかかわる話だ。

 もちろん、市場閉鎖をただ急げばいいわけではない。闇取引が活発になり、反社会勢力の資金源になるようでは困る。象牙の印鑑や和楽器などを扱う業者の保護・支援策も必要だ。伝統文化として例外的に取引を認めるのであれば、他国が納得できる十全な管理体制を築き、説明する努力も求められよう。

 この30年間で国内市場は10分の1にまで縮小した。象牙を取り扱わない大手スーパーやネット通販大手も増えている。

 この象牙製品は不可欠なものか。消費者一人ひとりが立ち止まって考えることも重要だ。

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