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 髪を黒く染めろと言われた――。学校の頭髪指導に悩む生徒たちがいる。経験者らに話を聞いた。

 東京都のフリーターの女性(18)は今春卒業した都立高校で髪を黒く染めるよう指導を受けた。女性によると、生徒指導の教員が髪色のサンプルが並んだ「スケール」を毛先に当てた。3~15番のうち3~5番は「黒色」と判断されるが、ロングヘアの女性の髪の毛先は「6・5」と告げられ、指導対象となった。「ドライヤーが原因」と説明したが、「黒く染めるか、切るか」と迫られた。

 染めようと美容室に行くと、傷みやすい髪質で「染めたら後でもっと茶色くなる」と止められた。店の名刺の裏にそう理由を書いてもらって学校に提出。2年間は何も言われなかった。

 しかし、3年で指導教員が代わると受け入れてもらえなくなり、「黒くしないと、校門で帰す」と言われた。女性は家族に相談し、学校側に抗議。行き過ぎた指導と認められた。だが、疑念は今でも晴れない。「生まれつきの髪をなぜ染めなきゃいけないのか」

 ■都立6割「証明書」

 頭髪指導をめぐっては、2017年、大阪府立高校3年だった女子生徒が地毛の黒染めを強要されて精神的苦痛を受けたとし、損害賠償を求めて大阪地裁に提訴したことで注目された。裁判は今も続く。また同年の朝日新聞の調査では、全日制の都立高校の約6割で髪の毛を染めたり、パーマをかけたりしていないか確認するため、「地毛証明書」を出させている実態も明らかになった。

 家庭用品大手「プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)・ジャパン」が2月、現役中高生ら600人を対象にしたネット調査では、13人に1人が地毛の黒染めを求める指導を受けた経験があると答えた。

 学校での子どもの人権に詳しい同志社大の大島佳代子教授(憲法・教育法)は、地毛の黒染め指導が憲法13条が保障する「自己決定権」を侵害する憲法違反にあたると指摘。「『ブラック校則』と言われるが、生徒が納得できる説明をしないまま従わせようとする教員の行き過ぎた指導こそが問題だ」と主張する。

 髪の色を統一する指導の必要性については、話題になった当時、大阪や東京の学校では「校内の秩序を保つ」「学校の評判が落ちては困る」などの理由が挙がっていた。ただ、中高の教員400人を対象にしたP&Gの調査では、髪や髪形に関する校則について、70%が「疑問を感じている」と回答。87%が「時代に合わせて髪形校則も変わっていくべきだと思う」と答えている。指導する側には葛藤もあるようだ。

 ■校則なくす動きも

 今年7月、病児保育などに取り組むNPO法人「フローレンス」代表理事の駒崎弘樹さん(39)らが発起人となり、頭髪指導の中止を求める要望書と1万9065人分の署名を東京都教育委員会に提出した。高等学校教育指導課の佐藤聖一課長は「生来の頭髪を一律に黒染めするような指導は行わない」と述べた。都教委は17年7月に各都立高へ地毛の黒染め指導をしないよう通達しているが、徹底を図るという。

 校則自体をなくす動きもある。東京都千代田区の区立麹町中学の工藤勇一校長は14年に着任以来、頭髪や服装について教員の指導対象から外した。「生き方や命、人権など対話すべきことは他にたくさんある」との考えだ。「身なりの乱れ」が、心の乱れや学力の低下につながるという考え方については「まったくの幻想」と言い切る。

 「心が乱れるのは、大人が問題視するから。教員は目的と手段を取り違えてはいけない。生徒には自分にとって何が大事かを考えてほしい」と話している。(波多野大介)

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