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 アスベスト(石綿)による新たな健康被害の発生を防ぐため、政府が規制の強化に乗り出すことになった。国際水準に照らして取り組みが立ち遅れてきた分野である。実効性のある施策を急がなければならない。

 建物の解体や改修にともなう石綿の飛散防止策を、中央環境審議会の小委員会がまとめた。正式な答申を経て、環境省は大気汚染防止法の改正案を国会に提出する方針だ。

 現行の同法は、屋根、天井、壁などに使われる成形パネルやタイルについては、石綿を含んでいても練り固められているので飛散する可能性は低いとして、規制の対象にしていない。だが、指摘を受けて環境省が調べたところ、工事のやり方によっては周囲に飛び散ることが確認されたという。

 この結果を踏まえ、小委員会は対象を「石綿が使われたすべての建物」に広げる案を打ち出した。工事に取りかかる前に、こうした建材の使用の有無を業者が調査し、都道府県に報告するように義務づける。

 石綿は火や熱に強く、安価なため重宝されてきた。しかし、吸い込むと細い繊維が肺に突き刺さり、長い年月を経て中皮腫や肺がんをひきおこす恐れがある。建設現場の労働者や石綿製造にかかわった人たちが訴えた裁判で、対策を怠ったとして国や建材メーカーの責任を認める判決も相次いでいる。

 こうした被害の深刻さを考えれば、規制の網を広げて漏れのないようにするのは当然の措置だ。国土交通省の推計では、石綿が使われた可能性のある民間の建物は280万棟にのぼる。老朽化による解体が進んでいて、2028年ごろにピークを迎えるという。対策が急務とされるゆえんだ。

 心配なのは、その膨大な「量」である。

 新たに規制されるのは、過去に出荷済みの石綿建材のじつに96%に相当する。対象となる工事の件数はいまの5倍、もしかしたら20倍になるとの試算もある。物量に圧倒されて、対策が形だけになってしまっては元も子もない。

 まず、石綿について正しい知識を持つ人材の育成が求められる。政府は企業任せにせず、研修機会の確保や財政措置など、必要な支援に努めてほしい。現場での飛散防止策の徹底が大切なのは言うまでもない。マニュアルに従って遮蔽(しゃへい)や散水をして作業を進めているかなど、都道府県は立ち入り検査による監視を強める必要がある。

 いましっかり手を打っておかないと、数十年後に被害が顕在化する。将来に責任を持ち越してはならない。

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