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 日産自動車の西川(さいかわ)広人社長兼CEOが辞任することになった。「ゴーン事件」と業績不振、仏ルノー社との関係など難題を抱える日産の立て直しに向け、妥当な判断だろう。新社長の人選を急ぎ、今度こそ経営刷新を実現する必要がある。

 記者会見した社外取締役らによると、取締役会が一致して辞任を求め、西川氏が受け入れたという。木村康・取締役会議長は「いろいろな西川さんの問題が発生している」と述べ、社内外の求心力の面で、このタイミングでのトップ交代が適切と説明した。

 西川氏はゴーン体制下で経営幹部を歴任し、2017年度から社長を務めていた。昨年11月にゴーン前会長が逮捕されると一転して前体制との決別を強調してきたが、直前まで中枢で支えた人物が、明確な自己批判や検証もなしに体制転換を主導することには無理があった。

 加えて不信を決定づけたのが、自らも株価連動型報酬で4700万円を不正に上乗せした金額を受け取っていたことだ。

 社内報告書によると、西川氏は13年に自らの役員報酬の増額を検討するよう、ゴーン前会長の側近だったグレッグ・ケリー前代表取締役に要請した。ケリー前代表取締役はそれには応じずに、権利行使日を偽装して株価連動型報酬を増額し、西川氏に支払ったとされる。

 日産は、西川氏は不正な増額を認識しておらず、具体的な増額方法の指示や依頼もしていないとして、不正行為に関与したとみる余地はないと認定。自ら行うべき手続きを他人任せにしたことは社内ルール違反であり上乗せ分の返還は求めるが、責任追及はしないという。

 だが、自ら報酬を増やすように要請し、結果として不正な上乗せを得ながら、内容は知らなかったという説明では、会社のトップとしての適格性に疑問符がつくのは当然だ。社内調査でも、金融商品取引法違反で逮捕・起訴されたケリー前代表取締役からは事情を聴いていないといい、経緯が十分解明されたとは言いがたい。

 今回の辞任の決定自体は、企業統治の強化の面で評価できるが、経緯や理由についての社外取締役らの説明は「客観的な情勢判断」といった抽象的な表現が多く、歯切れが悪かった。西川氏の今後の社内での立場も、明らかにされていない。

 日産は業績不振の中で大幅な人員削減を含めたリストラを計画しており、経営中枢の混乱が続くようでは、現場の従業員との溝は広がり、顧客も離れかねない。「社内外の求心力」の回復は容易ではないことを、経営陣は改めて自覚してほしい。

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