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 起きてはならないことが起きた。埼玉県川口市の15歳の少年が「教育委員会は大ウソつき」と書き残して命を絶った。

 16年に入学した市立中でいじめを受けた。翌年4月までに3度自殺を図り、不登校にもなった。市教委は3度目の自殺未遂から半年後の17年秋、ようやくいじめがあったと認め、第三者委員会を設けた。だが少年側の不信は深く、調査が進まないまま機能不全に陥っていた。

 事実を解明し、再発を防ぐ手立てを考え、その子が不登校になっているなら、安心して学校に戻れるよう努める。そのための調査なのに、当の子どもが亡くなってしまったのだ。

 許される話ではない。中学、市教委、第三者委それぞれが重く受け止め、指導や調査のあり方、その背景にある認識の誤りを根本から改める必要がある。

 落ち度は明らかだ。

 いじめの存在自体をずっと認めず、行動を起こさなかった。いじめ防止法や文部科学省の指針は、自殺(未遂を含む)や不登校の本人・保護者からいじめの訴えがあれば、学校の認識とは違っても重大事態ととらえ、調査にあたるよう定めている。加えて市教委は、第三者委を設けたことを少年側に伝えず、事態をさらにこじれさせた。

 市教委は同じ時期、別のいじめ事案をめぐり、文科省や県教委から実に55回にわたって「法に基づく対応をせよ」などと指導を受けていたという。まさに解体的出直しが求められる。

 考えるべきは、こうした問題ある対応は、川口市だけにとどまらないことだ。

 教委が法をふまえた措置をしない。被害者の意向に構わず、調査を進める――。程度の差はあれ、同様の話が各地で繰り返されてきた。法令の無理解、自己防衛などに加え、学校や教委に「外」の目が入りにくいことも原因として指摘される。

 対応策の一つが、法律専門家である弁護士が子どもの最善の利益を考え、学校に適切な対応を促す「スクールロイヤー」の制度だ。国の事業としては緒に就いたばかりだが、効果をみながら配置を広げてほしい。

 被害者・家族の多くが、進行中のいじめへの対応や事後の調査に、自分たちの声が届いていないとの不満を口にする。いじめ防止に取り組む民間団体は、第三者委のメンバーの一部を、被害者側が推薦できるようにすることを求めている。また、まだ30ほどしかないが、子どもの声を聞く公的な相談機関を設けている自治体もある。

 被害者を絶望に追いやらず、再発防止・いじめ根絶に通じる対策や制度づくりを、引き続き探っていかなければならない。

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