[PR]

 コンピューターゲームで競う「eスポーツ」が国内で広まっています。今秋の茨城国体では文化プログラムとして都道府県代表による対抗戦も行われます。昨年には国内の統括団体も設立され、学校の部活動にも採り入れられ始めています。一方で、ゲーム依存を助長する懸念も指摘されます。みなさんと探っていきます。

 ■ゲーム対戦、観戦も白熱

 国体ではサッカーの「ウイニングイレブン2019」、自動車レースの「グランツーリスモSPORT」、パズルの「ぷよぷよeスポーツ」の3部門が行われます。

 「さあ、コーナーだ。ねじ込んでくる! ねじ込んでくる!」

 グランツーリスモSPORTの東京、茨城の代表決定戦があった8月12日の東京都の百貨店催事場。実況と解説で対戦が盛り上がります。

 このゲームは、実在するサーキットコースを実車さながらに走る仕様。代表決定戦では富士スピードウェイが使われました。オンラインのタイムトライアルを通過した参加者が一斉にスタート。5周を走り、順位を競いました。

 本人がみるのは運転席からの光景ですが、観戦者はCGで映し出されたサーキット映像を、現実のレースのように見守れます。代表枠も絡み、コーナーでの抜き抜かれは、確かに手に汗を握ります。「みるスポーツ」としての魅力も醸しだされます。

 茨城県の一般の部(18歳以上)の代表になった龍ケ崎市の会社員、嵯峨鷹さん(32)は、父親と一緒に小さい頃からこのゲームを楽しんできました。「事故で人が死なないし、お金もかからない。カーレースの新しい可能性があると思います」

 8月18日には、埼玉スタジアムで「ウイニングイレブン2019」の埼玉県代表決定戦が行われました。スタンドに対戦ブースが設けられ、試合は電光掲示板に映し出されました。やはり実況、解説つきです。

 スペインのバルセロナ、イングランドのアーセナルなど、強豪クラブの実在の選手11人を、3人ずつで操作します。選手の特長を考慮しながら、フォーメーションを組みます。選手によってシュート力、ヘディングの高さなど能力が違うので、それを生かす攻め、逆にそれを封じる守りが必要になります。

 プレーヤー同士はよく話します。守備に入った時に、誰がプレッシャーをかけにいくかなど、連携が必須。2人までが後ろから画面をみながら指示でき、まさに「ベンチとの連携」。勝利には、確実にサッカーの理解度が求められます。

 少年の部(高校生)で代表になったのは、浦和東高サッカー部。顧問が「出てみたら」と勧め、3年生でチームを組みました。主将の石井大輝さんは「スーパースターを思い通りに動かせるのがおもしろい」。関口友哉コーチは「うちは試合に出る選手も出ない選手も『指導者になる』が目標。それが生きた」と選手同士のコーチングを勝因に挙げました。

 ■高校部活動に採り入れ

 eスポーツは高校の部活動にも採り入れられ始めています。

 名古屋市の城北つばさ高にeスポーツ部が誕生したのは昨年。8人の部員が週2日、活動します。

 顧問の鈴木佑哉教諭は「スポーツや音楽、美術と同様、ゲームがうまいのも特技。大会も緊張感があり、勝てばハイタッチ、負ければ悔し泣き。それも運動部と同じ」と言います。

 部長の徳田信忠さん(3年)は部の誕生を「好きなこととマッチするのでうれしい」と歓迎します。車いすの部員も2人。生まれつき足が不自由な深尾直誉(なおたか)さん(1年)は「腕と頭で戦うので、対等にスポーツができる」と話します。

 通学する生徒もいる通信制のわせがく高・前橋キャンパスでも昨年、eスポーツ部ができました。「不登校や友人関係がうまくいかない経験のある生徒が少なくない中、好きなゲームが登校のきっかけになれば」と顧問の金子駿教諭。部員は13人で、活動は週1回。金子教諭は「生身のコミュニケーションを通じて『自分も意外に話せる』という自信にもつながっている」とみます。

 部員の新井隆誠(りゅうせい)さん(1年)は中学時代、登校できない時期がありました。「支えがゲームでした。チャットで自分をさらけ出し、相談もできた」と振り返ります。eスポーツ部の存在が同校を選んだ理由の一つ。「通学して勉強時間とのメリハリができ、ゲームをする時間は極端に減りました。勝ち負けを気にせず、仲間のミスを笑って許す。まずはエンジョイしたいです」

 ■ひきこもり脱した人も

 eスポーツをひきこもりの人の支援に活用する動きもあります。

 岡山市を拠点に不登校の生徒をサポートするNPO法人ステップもその一つ。理事長の原昌広さん(36)は「学校に戻ろう、と自宅に会いに行くと拒否されますが、ゲームの相手として行くと玄関まで迎えてくれる」と言います。

 常勤スタッフの6人はいずれも得意なゲームがあり、かつて国内の大会で2位になったつわものも。

 原さん自身が小学校の時、ストレス性強迫神経症などでひきこもり、適応指導教室に通いました。そこで持ち寄ったゲームをして話すことで社会復帰につながりました。

 昨年は主に中高生の登校していない111人を支援し、109人が解決に向かいました。6割はゲームを通じた支援でした。原さんは「自室でのオンラインの世界にはまると現実世界の優先順位が下がってしまう」と考え、事務所につくった「ゲーム部屋」に来てもらっているそうです。

 岡山共生高にはひきこもりから脱し、6月にプロチームと契約した3年生がいます。eスポーツ部長の佐倉涼太さん。「ぜんそくの影響で昼夜が逆転し、中学で通学できなくなりましたが、仲間とできるeスポーツ部が通学の後押しになりました」

 佐倉さんが取り組むゲームは、5人で協力して相手の本拠地に攻め込む「リーグ・オブ・レジェンド」。「意図をわかりやすく伝えるコミュニケーション力が得られます」

 6月までは生徒会長も務めました。「昔は1日16時間はしていて、怒られて当然でしたが、今は勉強もできている。依存の目安は時間ではなく、他のことと両立できているかどうかだと思います」。大学に進み、eスポーツと教育を結びつける研究を目指しているそうです。(編集委員・中小路徹)

 ■「運動ではないけれど」

 朝日新聞デジタルのアンケートに寄せられた声の一部を紹介します。

     ◇

 ●まさにスポーツ

 先日舞浜で行われた高校対抗戦を観戦しました。「運動」ではないですが観戦はスポーツと全く変わりません。また、緻密(ちみつ)に作戦を立て心理戦を経てフィールドで戦う様はまさにスポーツです。「スポーツ」という言葉に「体を動かす」という意味が含まれてしまっているのでスポーツと呼ぶのに抵抗がありますが、それ以外は全くスポーツです。(プレーはしないが、観戦はする 東京 男 50代)

 ●戦争や格闘から離れれば

 eスポーツを完全否定するつもりはありませんが、ゲーム内容を「戦争・戦闘・格闘」から離れさせるべきです。そうしたら、少しは世間の見る目も変わってくると思います。(プレーも観戦もしたことがない 神奈川 女 50代)

 ●食べていきたい

 eスポーツで食べていきたいので頑張ります。(プレーしている 東京 男 10代)

 ●観戦が趣味

 私は入社試験の面接で趣味はeスポーツ観戦だと話しました。もちろん会社役員の方々には全然伝わらなかったですが、簡単に説明するとゲームをスポーツとして行っているもの、になり、ゲームと聞いて少し険しい顔になる人もいましたが、eスポーツの良さを説明すると理解してもらえました。(プレーはしないが、観戦はする 福岡 女 10代)

 ●「たかがゲーム」レッテルはがして

 健常者にとってはeスポーツは所詮(しょせん)ゲームかもしれないが、障がい者にとっては遊戯性、競技性、身体性を持つ立派なスポーツであり、他者と楽しむことができるアダプテッドスポーツとしての可能性を持つ。まず「たかがゲーム」というレッテルをはがし、可能性に関する議論を行うところまで進まなければならないと思う。(プレーしている 東京 男 30代)

 ●子どもに勧めるのはためらう

 ゲームとしか思えない私は子供へ勧める事はためらっています。eスポーツの世界でやっていけないと分かった時に学歴社会に対してどう向かっていくか先の事をついつい考えてしまう私はいけない事でしょうか? 無償化になった高校くらいは卒業して欲しいと願い、中学3年生の息子と日々格闘しております。(プレーも観戦もしたことがない 大阪 女 40代)

 ●1企業が作った競技、問題点も

 ゲームが1企業の財産であるところに問題があると思う。およそどんなスポーツでも、用具を作るのが完全に一つの企業であるというのはありえない。eスポーツはその性質上、競技自体を1企業が作り、ルールさえもコントロールするわけで、そのゲームをJOCやIOCが競技として採用することに非常に問題を感じる。(プレーしている 東京 男 50代)

 ●賞金受け取りやすい環境を

 自分の好きな格闘ゲームや(プレーヤーの視点で動く)FPSゲームなどが、韓国やアメリカなどで爆発的にヒットして、大規模な市場になっているのを見るたびに、日本でもこれくらい認められて欲しいな、と思ってしまいます。

 日本はゲームに強い歴史があるにもかかわらず、ひとの目や、法の制度によって大会が開催されにくい傾向があると思います。

 賞金を受け取りやすい環境があれば、eスポーツを子供の遊び、趣味、としてではなく、仕事として競技として認めてもらうことができるのではないか、とも思います。(プレーしている 埼玉 女 20代)

 ■世界市場拡大、追う日本勢

 eスポーツ産業は世界的に成長が続くとみられています。オランダの市場調査会社Newzooによると、世界市場規模は2017年の約6.5億ドル(約700億円)から、19年は約11億ドル(約1170億円)へと増加。22年には約18億ドル(約1900億円)まで拡大すると推計されています。ゲーム雑誌「ファミ通」を発行するGzブレインのまとめでは、18年に48億円だった日本の市場規模も、22年には99億円へと倍増する見込みです。

 もともと日本は、任天堂やソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)といったゲーム専用機メーカーに加え、ヒット作を生み出すゲームソフトのメーカーがそろう「ゲーム大国」です。しかし、ゲームを使った対戦やその観戦を特徴とするeスポーツの普及では後れを取ってきました。

 日本ではインターネットを使わないオフラインで遊ぶ家庭用ゲーム機が中心でした。賞金付きのゲーム大会の開催も法律によって制限されてきました。一方、欧米ではパソコンで行うゲームが主流となり、ネットを通じた対戦などを楽しむ文化が早くに定着しました。

 これに対し、日本のメーカーなども近年、国内でもeスポーツを盛り上げようとゲームの改良や活用に力を注いでいます。

 格闘ゲーム「鉄拳」シリーズを手がけるバンダイナムコエンターテインメントは、観戦を意識してゲームを開発。「鉄拳7」では対戦の終盤で互いの技が重なると、画面が超スローになり、どちらの技がヒットするのか徐々に盛り上げる演出を施しました。

 今年3月には、カプコンの人気格闘ゲーム「ストリートファイター」を使って、企業間の交流促進を図る大会が開かれました。プロゲーマー以外にもeスポーツを親しんでもらうねらいで、東京都内の39社が参加したそうです。

 メーカー側がeスポーツに力を入れる背景には、新たな収益源につながるとの期待があります。かつてはゲームの販売が主流でしたが、eスポーツ観戦が広まれば放映権でも稼げます。ファン獲得へメーカーの模索が続きます。(久保田侑暉)

 ◇来週22日は引き続き「『eスポーツ』って?」。普及に伴って依存症を懸念する声も出ています。付き合い方を考えます。

 ◇アンケート「幼児教育・保育無償化、どう受け止める?その2」をhttps://www.asahi.com/opinion/forumで実施中。ご意見はasahi_forum@asahi.comメールするへ。

こんなニュースも