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 東京電力福島第一原発の事故調査の再開を、原子力規制委員会が決めた。

 規制委は5年前に中間報告をまとめた後、調査を中断していた。原子炉建屋内の放射線量が下がったのを受け、新たな調査が可能だと判断した。

 福島第一原発では今後、廃炉の作業が進み、事故当時の現場の状況が失われる恐れがある。原子炉の内部を詳しく調べることはできないため事故の全容解明は難しいものの、いま可能な範囲を調べる意義は大きい。

 福島事故を受けて発足した規制委は、原発の安全規制とともに、福島事故の原因や被害を分析する役割も担う。国会や政府の事故調で積み残しになった問題について調べてきた。

 2014年にまとめた中間報告書では、重要機器や非常用電源は津波で損傷したとの見解などを明らかにした。国会や政府の事故調が関係者の聞き取りを中心に検証を進めたのに対し、規制委は事故現場の検証にも重きを置いている。

 中間報告の後、調査が止まっていた理由として、放射線量が高くて現場に立ち入ることができなかったことが大きい。再開を決めたのは、事故から8年半がたち、がれきの撤去や除染で線量が下がり、立ち入り可能な場所が広がったためだ。

 主に調べるのは、放射性物質が原子炉格納容器から漏れたルートや、原子炉を冷やす機器の動作状況だという。

 たとえば2号機では、放射性物質を含む水蒸気の排気(ベント)によって原子炉格納容器内の圧力を下げることに失敗した結果、格納容器からじかに大量の放射性物質が漏れてしまったとみられている。

 ベント設備は、1992年に国が過酷事故対策を求めたことを受け、電力会社が自主的に設けたものだ。その設計や施工に問題がなかったか、東電が事故対策の重要性を真剣に受け止めていたのかなどを調べる。

 電力会社の姿勢を振り返り、安全対策が形骸化していなかったかどうかを検証し、教訓をくみとることは、新たな規制をきちんと機能させるために欠かせぬ作業だ。東電は調査に誠実に協力しなければならない。

 規制委が来年中にまとめる報告書を、全国の原発の安全対策に役立つものとするべきだ。

 調査は廃炉の作業と並行して進められる。いずれも重要であり、両立させる必要がある。規制委の事務局である原子力規制庁や、廃炉を所管する経済産業省資源エネルギー庁などが連絡会議を新設し、事前に作業内容を調整することにしている。縦割り行政を排し、作業が円滑に進むようにしてもらいたい。

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